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『Aloha! Go Bananas』から6年半を経てようやく発売されたスパジーズの2ndアルバム。レコーディング自体は2006年春に行われていて、先行シングルの「I Want A Divorce」は2006年末には発売されていたのに、レーベルとの契約問題をめぐる裁判沙汰のせいで4年間もお蔵入りになっていたのだった。サヴェージ・ガーデンやレディオ・バードマン等を手掛けたチャールズ・フィッシャーをプロデューサーに迎え、アメリカでレコーディング、とレーベルからの期待も大きかったことがここまで裁判が長引く要因になってしまったのだろうか。まあ、いずれにしても晴れて世に出ることになったのだからめでたいめでたい。
基本的には『Aloha! Go Bananas』のラモーンズ路線を継承しつつ、アコースティック・ギターやキーボードを新たに導入。バンド・アンサンブルには大陸的なスケールが加わって、「Dissolution (Is The Only Solution)」などではR.E.M.の「(Don’t Go Back To) Rockville」に通じる味わいも。キャットのシンガー・ソングライター志向が徐々に前面に出てきた感じだ。もちろん、これまでと同様に60年代ガールズ・ポップのエッセンスがたっぷりと詰め込まれたキャッチー&ポップなメロディは健在。過去の来日公演を観てきた人ならば分かるように、3人ともそれほど演奏能力に秀でた人達ではないわけだが(特にアリーのドラムが弱い)、そのことが逆に彼女達を骨太なソングライティングに向かわせているのかもしれない。キャットもほとんどコード弾き一本のギタリストだしね。ちなみに、「Dissolution (Is The Only Solution)」や「What's Your Story?」でやたらと饒舌なリード・ギターが鳴っているなあと思ったら、キャットのボーイフレンドであるユー・アム・アイのデイヴィ・レインが参加しているのだった。彼はキャットがツアー直前に腕を骨折してしまった時にもサポート・ギタリストとしてスパジーズに参加しており、もう準メンバーと言ってもいいような存在になってきたな。ユー・アム・アイとスパジーズは兄妹バンド!
というわけで4月14日からは3度目となる日本ツアーが開始されるので、本作と併せて要チェックのこと。全12曲34分。