Roddy Woomble/The Impossible Song And Other Songs
★★★★
日本でも大きく報じられたアイドルワイルドの活動休止ニュースだが、あれはロディ・ウォンブルの「しばらくバンド活動休むわー。なんせ俺達もう人気ないからさー」という英国人らしい自虐ギャグ発言が誤解されて一人歩きしてしまった、というのが真相だと思う。まあ、その後も彼等は普通にライヴ活動を行っているしね。
さて、そんな騒動を経て発売されたロディ・ウォンブルの2ndソロ・アルバム(クリス・ドレヴァー&ジョン・マッカスカーとの連名で発表した『Before The Ruin』を含めると3作目)。本作を聴いて、現在のアイドルワイルドが非常に健康的な状態にあると実感することができた。アイドルワイルドはギター・ロック・バンドなので自身のトラッド志向は抑制せざるを得ない、その「はけ口」として存在していたのがこれまでの彼のソロ活動であったと思う。ところが彼等の最新作である『Post Electric Blues』は、バンドのギター・ロック志向とロディのトラッド志向が高い次元で融合した見事な傑作だった。
だからこそ、ロディにとってのソロ活動の意味合いも変わってきたのだろう。本作のソングライティング・パートナーとして抜擢されたのが特にトラッド志向が強いわけでもないソレン・マクリーンということからもそれは明らかだ(要所要所でバンドメイトであるロッド・ジョーンズも力を貸している)。もちろんトラッド志向はロディの資質なので本作でも存分に発揮されてはいるのだが、これまでのようにバンド活動の対極として置かれているのではなく、むしろバンド活動からの延長線上、『Post Electric Blues』からの延長線上において、肩の力を抜いて「うた」に向き合った非常に風通しの良い作品として仕上がっている。まるでアコースティックなアイドルワイルド・ソングというべき「Leaving Without Gold」が しれっとアルバムに収まっているのはその証左だ。アイドルワイルドの元メンバーであるギャヴィン・フォックスも参加した全12曲49分。