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イギリスを代表するハゲバンドの7年振りとなる新作。ヴォーカリストであるティム・ブースの脱退〜活動停止(実質的な解散)〜ティム・ブース復帰を経て発表されただけに感慨もひとしお。最近は何の必然性もない再結成が横行しているけれど(ジザメリとか)、ジェイムズの場合はオリジナル・メンバーであるティム・ブース、ジム・グレニー、ラリー・ゴットの3人が旧交を温めるためにジャム・セッションを行ったところ、次々と新曲が生まれてしまったので活動再開を決意、という経緯をたどっているだけに、音の方もこれ以上ないほどの必然性に満ちているのだった。しかも、本作の録音のためにフランスにバンド自前のスタジオを建設したというほどの気合いの入りようだ。
当初は『Laid』(大傑作! っていうかアマゾンで1113円って安すぎ! マジで一家に一枚常備しとくべき!)時の6人編成での復活!という触れ込みだったものの、いつのまにかトランペッターのアンディ・ダイアグラムまで復帰していて、彼等の最初の商業的なピークであった『Seven』時と同じ7人編成での録音。だから、というわけでもないんだろうが、循環コード進行で螺旋状に昇りつめていく、スケールの大きなバンド・アンサンブルを前面に押し出した作りは『Seven』に近いといえるかも(ブライアン・イーノも不参加だし)。『Whiplash』以降は打ち込みとバンド・サウンドの融合を試みてきた彼等だが、ここではジェイムズというバンドの「素」の姿を表現することにこだわったのだろう。まあ、じゃなければ再結成する意味がないしな。
それにしてもティム・ブースが紡ぎだす、まるでトラッド・ソングのようにおおらかで美しいメロディはどうだ! 英国ロック界の至宝と呼ぶにふさわしい珠玉の「うた」の数々! バンド結成から25年以上経過してるっつうのに、この鈍らなさには改めて驚かされる。アルバム全体が、彼等を発掘した故トニー・ウィルソン(映画『24アワー・パーティ・ピープル』参照)に捧げられていることにも注目。心臓の鼓動のようなビートに導かれて始まるオープニング・ナンバー「Bubbles」は、「それでも僕は生きる」という、バンドの再生&決意表明。タイトル・トラックの「Hey Ma」は911以降の世界を描いた反戦歌だし、つまり本作は2008年の「今」を生きようとする強靭な意志に貫かれているのだった。素晴らしい。同じハゲバンドだったら、おいらはR.E.M.よりもジェイムズを支持するね。全11曲46分。必聴。
Hey Ma - Its Now 5 Years In Iraq