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ジェイムズの新作はティム・ブースが母親と親友を相次いで亡くしたことが大きな影を落としており、「死」がアルバム全体の大きなテーマとなっている。アルバム・タイトルはそれを象徴するかのようにフランス語で「小さな死」を意味する「La Petite Mort」。『愛しき者はすべて去りゆく』(もしくはその映画版である『ゴーン・ベイビー・ゴーン』)から着想を得たと思われる「Gone Baby Gone」なんて曲もある。
だが、実は「La Petite Mort」という言葉には「オーガズム」という意味もある。生と死はいわばコインの裏表のような関係性。永遠に続く「死」があるからこそ、ほんの一瞬しかない「生」が輝くのだ。だから、というべきだろうか、本作はたぎるような生命力に満ちた瑞々しいギター・ロック・アルバムに仕上がっているのだった。EDMサウンドをうまく取り入れた「Curse Curse」は、まさに刹那の瞬間としての「生」を掴んだ実感に溢れており、本作を代表する楽曲といえるだろう。そして、それは90年代にマッドチェスター・ムーヴメントと共振して大ブレイクを果たしたジェイムズというバンドの本質が今も変わらずに、今も衰えずに息づいていることを証明するものである。せっかく生きているんだったら生を謳歌しないとね。老いさらばえて死んでいくまでにできることは、まだまだたくさんあるってこと。再結成以降の彼等のアルバムの中ではダントツの最高傑作。全10曲45分。必聴。
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↑毛糸のストップモーション・アニメで繰り返される諸行無常を描いたPVも素晴らしい!