あのどうしようもなかった『シカゴ』よりもさらに酷いミュージカル映画になっていることに驚いた。とにかく何の必然性もないのにカットを割りすぎていて、ミュージカル映画としての旨味が皆無。そして主演のダニエル・デイ=ルイスはミスキャスト。「女に目移りしまくるイタリア人のエロ中年監督」を演じるには軽みがなさすぎる。だってオリジナルではマルチェロ・マストロヤンニが演じてたんだぜ。今のハリウッドで誰が相応しいかといったら、そりゃあマシュー・マコノヒーたんに決まってるでしょうが! ロブ・マーシャルは今後もまだミュージカル映画を撮る気があるんだったら、TVムービー版『アニー』(これは佳作)を手掛けていた頃の姿勢に戻って欲しいな。こういう賞狙いのミュージカル映画はもうウンザリだよ。フェリーニ作品のミュージカル版が観たいんだったら『スイート・チャリティ』(こちらの原作は『カビリアの夜』)の方がお勧め。
そういえば、おそらくはマルチェロ・マストロヤンニに対するリスペクトで、彼との共演の多かったソフィア・ローレンが本作に出演しているんだけど、彼女とピーター・セラーズのデュエット・ナンバー「あらまあたいへん!(Goodness Gracious Me!)」は名曲だよね。
追記:ダニエル・デイ=ルイスの役は、当初はハビエル・バルデムが演じる予定だったとのこと。たしかにそれならばマストロヤンニ的な胡散臭さ/軽み/色気があるわな。