Scarlett Johansson/Anywhere I Lay My Head
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スカーレット・ヨハンソンの女優道は『ロスト・イン・トランスレーション』によって決定付けられたといってよいだろう。それはすなわち、徹底したオヤジ受け狙いということ。
歌手としてのデビュー・アルバムとなる本作でもその路線はしっかり(ちゃっかり)守られている。発売元はライノ・レコードで、中身はトム・ウェイツのカヴァー集、プロデューサーはTV・オン・ザ・レディオのデヴィッド・シーテックで、さらにはニック・ジナー(ヤー・ヤー・ヤーズ)やデヴィッド・ボウイ(『プレステージ』繋がり)がゲスト参加しているという、ピッチフォーク・メディアを斜め読みした中年オヤジが企画したかのような、完璧なまでに日経エンタテインメント!なアルバムに仕上がっているのだった。でもさあ、そんな作品をいったい誰が求めているっていうんだよ? 少なくとも、おいらは全く求めてないぞ。
当然というべきか、全米アルバム・チャートでは126位と大コケ。肝心のピッチフォーク・メディア受けも最悪。同時期に発売されたシー&ヒム(ズーイー・デシャネル)のデビュー・アルバム『Volume One』がほとんどノン・プロモーションにも関わらず71位まで上昇したことを考えてみると、本作の壮絶なハズしっぷりが分かるというもの。当り前だよ、『Volume One』はズーイーが長年に渡って書き貯めてきたオリジナル曲をまとめた、心のこもった作品なのに対して、本作はサブカル層に媚びただけの底の浅い代物なのだから。
というわけで、このアルバムをぬるーく褒めている日本の音楽雑誌の連中は、これっぽっちも信用するに値しない鼻クソ野郎だと断言したいね。その前にシー&ヒムをきちんと評価しろっつうの。「I Don't Wanna Grow Up」のゴミみたいなカヴァーを聴いていたら、ラモーンズの爽快なカヴァー・ヴァージョンで耳を掃除したくなってきたぜ。全11曲44分。
Ramones - I Don't Wanna Grow Up