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続いては元ワイルドハーツのジンジャーの新作。純粋な「ジンジャー」名義のオリジナル・アルバムとしては本作が初となる。
ハードなギター・ロック・バンドを率いていた、同世代のやたらと多作な稀代のシンガー・ソングライターということで、以前からフランク・ブラック(1965年生まれ)とジンジャー(1964年生まれ)には通じるものを感じていた。ワイルドハーツのノイズまみれの傑作『Endless Nameless』を正しく評価できるのはピクシーズのファンじゃないかと今でも思っているし。そんな彼等が同時期に2枚組のソロ・アルバム(の日本盤)を発表するとはあまりにも奇遇だった。
シルヴァー・ジンジャー5がそうであったように、ジンジャーが自身のプロジェクトに「ジンジャー」の名を冠する時には、間口の広い作品を作るように心掛けているようだ。本作も例外ではなく、シルヴァー・ジンジャー5の時よりもさらにポップでシンガー・ソングライター色の濃いサウンドに仕上がっているので、再結成ワイルドハーツでの前作『The Wildhearts Must Be Destroyed』に不満だった人(≒おいら)でも十分に納得&満足できるはず。
ちなみにフランク・ブラックとジンジャーの決定的な違いは、後者の方が圧倒的に評論家受けが悪いという点にあるんだが、そういう意味でカントリーやインダストリアル・ロックやピアノ・バラード、そしてブレイクビーツまであるという、本作のやたらとバラエティに富んだ内容は、ジャンル分けに拘る音楽専門誌から(またもや)嫌われてしまう要因になってしまうのかもしれない。でも、リスナーの立場からすればだからこそ信頼できるってなもんだよな。っていうかフランク・ブラックより年上のジンジャーの方が遥かに活力に満ちていて若々しいってのはどうなのよ。
全19曲80分。2枚組ではあるが、日本盤は手頃な定価(2380円)で販売されているので、一見さんでもある程度は気軽に購入可能。こちらにはボーナス・トラックとしてリプレイスメンツのカバー「Answering Machine」が収録されているのでそちらも要チェックのこと。