Jackie DeShannon/You Won't Forget Me: Complete Liberty Singles Volume 1
★★★
Jackie DeShannon/Come and Get Me: Complete Liberty And Imperial Singles Volume 2
★★★
Various Artists/Break-A-Way: The Songs Of Jackie Deshann
★★★★
ジャッキー・デシャノンの曲を聴いていると、ポピュラー・ミュージックの世界で成功することの難しさを考えずにはいられない。まるでバービー人形のようなフォトジェニックなルックス、有能なソングライターで、シンガーとしても一流、さらには60年代のフォーク・ロック・ムーヴメントに先鞭をつけた人物でありながら、最大のヒット曲がバート・バカラック作の「What The World Need Now Is Love」ということもあって、「シンガー・ソングライター」としてそのポテンシャルに見合った成功を収めることができなかった。最近第2弾が発売された、エース・レコーズ入魂のシングル集においても自作曲と他人の書いた楽曲がほぼ半々で、もちろんこれは彼女がシンガーとして一流であったことの証左でもあるわけだが、そのせいで全体の方向性が散漫になっている印象は否めないのだった。
優れたソングライターなのに代表曲が他人の作品といういう意味では、たとえばハリー・ニルソンに近い存在といえるものの、彼の場合は(商業的な成功はともかくとして)職業作家からシンガー・ソングライターへと上手くキャリアを移行していったのに対して、ジャッキーは職業作家とシンガーとしての活動を並行して行っていた(どちらがメインとも言えなかった)が故に70年代のシンガー・ソングライター・ブームの波にもうまく乗りきれず、世間的な立ち位置が今でも不明瞭なままなのだと思う。
さて、『Break-A-Way: The Songs of Jackie Deshann』は1961年〜1967年にかけて取り上げられたジャッキー・デシャノンの楽曲を集めた、つまり職業作家としての側面に光を当てたコンピレーション。彼女は1944年生まれなので、17歳〜23歳の時期の作品集となるわけだが、それで「Break-A-Way」、「When You Walk In The Room」(ビートルズ「涙の乗車券」の元ネタ!)、「Should I Cry」、「Don't Doubt Yourself, Babe」といった名曲揃いなんだから本当に恐れ入るわ。ただ、微妙に押しが弱い辺りがこの人のその後のキャリアを物語っているような(だから好きなんだけど)。