★★★★★
べスト盤やティム・ロジャースのソロ・アルバムがあったので、それほど不在を強く感じはしなかったが、ユー・アム・アイのオリジナル・アルバムとしてはなんと2002年の『Deliverance』以来。近年はアメリカ南部ロックへと傾倒していたティム・ロジャースだが、今作は彼の原点である中期リプレイスメンツを彷彿とさせるストレートなロックンロール・アルバムとなった。
いや、単に衒いのないロックンロール集であるだけではない。本作はユー・アム・アイのライブ・バンドとしての魅力を音盤に刻み込む事を試み、そして成功した初のオリジナル・アルバムなのだ。右チャンネルにデイヴィ・レインのギター、左チャンネルにティム・ロジャースのギターという定位がアルバムを通して固定されている事からもそれは明らかだろう。
それにしてもユー・アム・アイというバンドはほとんど奇跡的な存在であると改めて思った事だった。だって、この人達って元々はソニック・ユース・チルドレンなのだよ(初期2枚のアルバムをプロデュースしたのはソニック・ユースのリー・ラナルド)。そんなキャリア15年近くになるベテラン・バンドが、変に老成してしまうことも、90年代ノスタルジーに囚われることもなく、軽やかに普遍的なギター・ロックを奏でてみせる姿はいっそ感動的ですらある。まあ、この「軽み」故に、オージー・ロック界の大御所であるにも関わらず、日本のロック・ジャーナリズムでは無視されてしまうんだろうが、そもそもロック・ジャーナリズムなんてクソみたいなもんだしな。
ハードエッジなロックンロールにティーンエイジ・ファンクラブ風のコーラスが被さる「これぞユー・アム・アイ!」というべき必殺ナンバー「A Nervous Kid」を筆頭に、相変わらずティム・ロジャースのソングライティングは冴えまくり。昨年発表された『Ghost Songs/Dirty Ron』は2枚組だったし、一体どれだけ良い曲を書けば気がすむんだよ! ピクチャーズでの活動を経たデイヴィ・レインがこれまで以上にボーカリストとしてフィーチャーされたりと、バンドとしての化学反応の強さも過去最高だ。全12曲36分。必聴必聴大必聴。
You Am I - Ain't It Funny We Don't Talk Anymore