KID FRESINOの「Champion」において大胆にサンプリングされ、あっこゴリラやキンブラにも多大な影響を与えているのだから、ファンクの女王ことベティ・デイヴィスのキャリアを追ったドキュメンタリー映画『Betty: They Say I'm Different』が今の時代に作られたのは必然といえるだろう。むしろ遅すぎるぐらいだ。
映画内では断片的にしか語られていないので、あくまでもそれを観た上での自分の推測なんだが、結局のところベティ・デイヴィスが突如として音楽業界から姿を消したのは、「Nasty Gal」としてのペルソナと素の自分との乖離、そしてキャリアが停滞していたところに親族の死が重なって極度の鬱状態に陥ってしまったことが大きいのだと思われる。そして現在でもその鬱状態から抜け出せていないように見えるのがこの映画の悲しいところだ。かつてのバンド仲間を集めておそらくは同窓会的な場面を作ろうとしたのだろうが、結局ベティ・デイヴィス本人は現場に現れず、という悲しい結末。隠居状態だった80年代前半に、原宿クロコダイルで箱バンとして一ヶ月ほどライヴを行っていたことについても(ベティが上記のような状態なので)ほぼ語られず。ただし、彼女の部屋にある日本由来の物の多さにはその面影が感じられる。