本場ナッシュヴィルのカントリー・ミュージックに憧れを抱き続けている(ムショ帰りの)グラスゴーの女性シンガーを描いた『Wild Rose』(来年日本公開されるらしいすね)は、サクセス・ストーリーの音楽映画としては後半の展開をだいぶしくじっていると思う。いやまあ、カントリー・ミュージックが題材なので、自分の「ルーツ」を大切にしましょうという保守的な結論になってしまうのは仕方ないとはいえ、2018年にもなって随分と反動的な話だなあと思ってしまった。というか、これを観て『ジョージア』がいかに優れた音楽ドラマであったかを実感させられた。『ジョージア』は普通であればクライマックスになるであろう「Take Me Back」の長尺のライヴ・シーンを中盤に置いて、そのさらに先を描いていたのだから。伝統的なカントリー/フォークを題材としながらもロック/パンクと対比させることによって単純に「家族の絆バンザイ!」とはならない奥行きの深さ。『Wild Rose』より20年以上前の作品なのに、だ。
とはいえ、『グッド・ヴァイブレーションズ』においてジョン・ピールがいかに偉大なDJであったかが描かれていたように、『Wild Rose』ではボブ・ハリス(『The Old Grey Whistle Test』の司会者ね)がいかに偉大な現役DJであるかが描かれているので、その真っ当さはきちんと評価したい。しかも映画のオープニングは主演のジェシー・バックリーの豪快な歌唱によるプライマル・スクリーム「Country Girl」のカヴァーを大フィーチャーだ(この選曲は「本場アメリカの音楽に憧れを抱くグラスゴーのミュージシャン」という繋がりだな)。