ライトニング・シーズの初来日公演、まだ意外とチケットに余裕があるみたいっすね。
エコー&ザ・バニーメンやペイル・ファウンテンズ、ドッジー、ズートンズなどを手掛けてきたリヴァプールの名プロデューサーであるイアン・ブロウディは、ビートルズの伝統を今に継承し続けているシンガー・ソングライターでもある。彼が1989年から始めたソロ・ユニットがライトニング・シーズだ。ユニット名はプリンスの「Raspberry Beret」の歌詞からの引用だが、ちょうどプリンスのサウンドがビートルズに接近していた時期の楽曲であり、そこにイアンは惹かれたのだろう。そんな彼がプリンスばりに1人でほとんどの楽器を演奏したライトニング・シーズとしてのデビュー・アルバム『Cloudcuckooland』は、チープな打ち込みからピュアな歌心が溢れ出す紛うことなき傑作で、「Pure」はタイトルからもライトニング・シーズの代名詞として語られ続ける代表曲となった。
そして、90年代半ばからはメンバーを加えてバンド編成に。94年の『Jollification』と96年の『Dizzy Heights』では当時のブリットポップ・ブームの波に乗って商業的にも成功。サッカーのイングランド代表の公式応援歌として作られた「Three Lions」は国民的な大ヒット・ソングとなる。だが、やはりギターが唸りまくるパワーポップ・ソングの「Ready Or Not」こそが、この時期を代表する最大の名曲だろう。
また、この時期にはテリー・ホール、マニック・ストリート・プリーチャーズのニッキー・ワイアー、ベイビー・バードのスティーヴン・ジョーンズといった曲者達とも共作し、彼等の個性をポップに落とし込んでいったことも特筆しておきたい。イアンのプロデューサーとしての資質はこうしたところでも発揮されていたのだった。
その後は打ち込み路線に回帰した『Tilt』を発表するが、これが商業的に失敗したこともあってライトニング・シーズは2000年に一旦活動を停止する。しかし、このアルバムはコンテンポラリーなダンス・ミュージックに接近してビートが強化された『Cloudcuckooland』といった趣きの傑作なので、ペット・ショップ・ボーイズやニュー・オーダーのファンの方達などにも広くお勧めしたい。アル・グリーンやフリートウッド・マックからのサンプリングもあって気が利いているし(トラック作りにおいてはボム・ザ・ベースのティム・シムノンも参加している)。