映画『ヴァーサス/ケン・ローチ映画と人生』(監督:ルイーズ・オズモンド)観賞。★★★★。
「人と人とのシンプルなつながりと共に人間を撮る。人々の暮らしについての映画を作るなら政治は不可欠だ」
『わたしは、ダニエル・ブレイク』に至るまでのケン・ローチの50年以上に渡るキャリアを追ったドキュメンタリー。監督は『運命を分けたザイル2』を手掛けたルイーズ・オズモンド。以前に日本でも出版されていた『ケン・ローチ (映画作家が自身を語る)』と違って、本作は周囲の人々の証言による客観的な視点と過去作の映像がふんだんに盛り込まれているので、『わたしは、ダニエル・ブレイク』でケン・ローチを知ったという人にも入りやすい内容になっているのではないだろうか。話の中心となるのは『Ken Loach At The BBC』に収録されているBBC時代の諸作と90年代の復活劇、そしてその間に名作『ケス』などの話が織り込まれるという構成。個人的には久しぶりに彼の映画の映像をまとめて見て感動を新たにした。やっぱり「アメリカ映画が描く『真摯な痛み』Vol.2」に続く上映イベントでは彼の最高傑作の一つである日本未公開の『The Price Of Coal(石炭の値打ち)』の2部作を上映したいっすねえ(上映権を取得できるかは分からないけど)。そしてケン・ローチ自身が「黒歴史」と位置付けているTVCM仕事が見れるのも嬉しい。まさかケン・ローチがマクドナルドのCMを手掛けていたとは! でも、そこで描かれているのはあくまでも「ケン・ローチ映画」に登場するような市井の人々の日常であって、「腐ってもケン・ローチ」であることを思い知らされたのだった。