「ラテン語が分かるのに、どうして炭鉱なんかで働いてるんだ?」
「他に仕事がないからだよ」
『パレードへようこそ』からの流れで『Ken Loach At The BBC』に収録されている『The Price Of Coal(石炭の値打ち)』を観賞。脚本を『ケス』の原作者でもあるバリー・ハインズが手掛けているから言うわけではないけど、これは『ケス』に匹敵する、ケン・ローチのキャリア史上でも屈指の傑作だと思った。チャールズ皇太子の炭鉱視察によって巻き起こるドタバタを描いた第一部、炭鉱崩落事故が起こる第二部、どちらも素晴らしい。特に皆が一緒の傘に入ってパブから帰宅する場面の詩情には感動した。目の前で困っている人がいたら手を差し伸べること。雨で濡れている隣人に傘を差し出すこと、生き埋めになった仲間を救い出そうとすること、どちらもその行動原理には大した違いなどないのだという、とてもシンプルな、でも本当に大切な真理が描かれている。
サッチャーはこういう(常に命の危険と隣り合わせの)生活を送ってきた人々を真っ先に切り捨てたんだから、そりゃあケン・ローチもビリー・ブラッグもLGSMの連中も怒るって話だよな。
そういえばウェス・アンダーソンって『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』では『ケス』に対して、『ムーンライズ・キングダム』では『Black Jack』に対してオマージュを捧げているぐらいだから、かなりのケン・ローチ好きっすよね。