原題は『HOUSEKEEPING』つまり「家事」ということだが、普通に家事をこなせないシルビーのような女性が主人公なのだから、皮肉な題名ではある。周りの世間とか社会とかいったものと、同調できないヒロインを静かな表情で演じてるクリスティーンが、映画のラストで鉄橋を渡る前に、
「この先にはいろんな世界が広がってるのよ。それを見せてあげたいの」
とルースに語りかける場面は、初めてシルビーが、その心情を溢れさせてるように見え、その演技には胸を打たれた。
(中略)
女優クリスティーン・ラーチが、「世界とフィットできない」あるいは「世間からはじき出された」そうした人物像に強いこだわりを持って、キャリアを重ねてきてるのは明らかだろう。
それが『シルビーの帰郷』に出演したことで、役柄に目覚めたようなことなのか、もっと以前から彼女の中で、育まれてきたような、ある種の人生観なのか。
7月30日に開催した特集上映「アメリカ映画が描く『真摯な痛み』」がそれなりに好評でしたので、「アメリカ映画が描く『真摯な痛み』Vol.2」の開催が早くも決定いたしました。今回もお得な2本立て1000円で行う予定です。上映作品の一本目は『シルビーの帰郷』でお馴染みの女優クリスティーン・ラーチが監督した名作『マイ・ファースト・ミスター』で、これが劇場初公開となります。二本目はただいま交渉中ですので確定次第発表したいと思っております。会場・開催時期も二本目の状況次第って感じなんで、とりあえず続報を待っていてくださいー。だからくよくよするなよ、とか言っとく!
『マイ・ファースト・ミスター』って、ありがちな「破天荒爺さん」ものとは構造が逆転している、つまり若者(リーリー・ソビエスキー)の方がどちらかといえば破天荒な存在で、そちらの視点から描かれた物語であるというのが作品の良さに繋がっていると思う。だからこそ、「世界とフィットできない」人間の心情に寄り添った「はみ出し者映画」として素晴らしいわけだ。