Panic! At The Disco/Death Of A Bachelor
★★★★★
パニック!アット・ザ・ディスコは本当に変な(「Pretty. Odd.」な)バンドだ。ビートリーなポップ・パンク/エモを展開していた1st〜2nd、メイン・ソングライターであったライアン・ロス*1が脱退しオーソドックスなポップ・パンク/エモに回帰した3rd、エレクトロニックな色合いが強まりバンド・サウンドから逸脱し始めた4th。そして遂にドラマーのスペンサー・スミスが脱退し、名実共にブレンドン・ユーリーのソロ・ユニットとなってしまった本作では、これまでのパニック!アット・ザ・ディスコを下味に、ヒップホップとフランク・シナトラを煮込んだ闇鍋状態のポップ・サウンドに。これはブレンドン・ユーリーの「俺の歌声がありさえすれば、それはパニック!アット・ザ・ディスコなんだ」という自信と確信があったからこそ、ここまで振り切ることができたのだと思う。しかも、マイク・ヴァイオラやウィーザーのリヴァース・クオモ、セミソニックのダン・ウィルソンといったパワー・ポップ・オールスターズがソングライティング・パートナーとして支えていることもあって個々の楽曲の完成度は恐ろしく高いのだから恐れ入る。
ビッグバンド・ジャズに乗せてパニック!アット・ザ・ディスコのメンバー変遷をビーチ・ボーイズに重ねて自虐的に歌った「Crazy = Genius」は情報量の多さに聴いていると頭がクラクラしてくるほど。「Don't Threaten Me With A Good Time」においてB-52'sの「Rock Lobster」をサンプリングしてくるセンスも見事。バンド史上最高のチャート・アクション(全米アルバム・チャート初登場1位!)を獲得しているのも納得の、新たな地平に到達した傑作だと思う。
*1:彼がパニック!アット・ザ・ディスコ脱退後に結成したヤング・ヴェインズの『Take A Vacation!』は彼の60年代趣味が全開になった快作なのでこちらも必聴のこと。