映画『Amy』(監督:アシフ・カパディア)観賞。★★★★。
エイミー・ワインハウスのキャリアを追ったドキュメンタリー映画。何となく予想できたとはいえ、幸せな楽しい時間は最初の30分ほどで、残りの1時間半は皆が知る「悲劇」に向けてひたすら突き進んでいく辛すぎる内容だった。当然、観客はその成り行きをただただ見守ることしかできないという。
こうして彼女の生涯を知ると、とことん人との出会いに恵まれなかった人生だなあ、と。もちろん最大の悪人は彼女の元夫のブレイクなんだが、代表曲「Rehab」の中で「パパだって『お前はリハビリになんて行かなくても大丈夫だ』と言ってるし」と歌われていた彼女の父親も相当に酷い奴ですよ。そんな中でモス・デフと育まれた友情はほとんど唯一の希望のようにも見えてくる。しかし、イギリスとアメリカで海を隔てた関係だったこともあって、彼女の命を救うまでには至らなかったのが無念極まりない。
あとはまあ、『Frank』は精神的に相当安定している状態の時に作られたことが音からもよく分かりますね。『Back To Black』になると、すでに地獄行きの列車の中で、その終着点が視界にチラついてきてしまってどうにも切ない(そこがこのアルバムの美しさでもあるわけだが)。そして、身を切るように自分の実人生を歌にしてきたエイミー・ワインハウスも、カヴァー曲を歌う時だけは一人の音楽好きな少女に戻るのが印象的(トニー・ベネットとのレコーディング風景の微笑ましさといったら!)。彼女のこういう姿をもっと見ていたかった。
「生き続けていれば、どうやって生きていけばいいかは人生が教えてくれるものなんだ」。