映画『ダラス・バイヤーズクラブ』(監督:ジャン=マルク・ヴァレ)観賞。★★★★★。
ロデオ場でのセックスと死(もしくは擬似的な死)が描かれるオープニングの30秒。それらは常に「生」と隣り合わせのものであり、人生を生き抜いていくためには、振り落とされないように戦い続けなければいけない、ということが残りの110分間で語られる。だから最後の最後に(それでも)ロデオに挑もうとするマシュー・マコノヒーの姿が感動的なのだ。それはHIVと戦い続けた、アメリカと戦い続けた主人公の生き方そのものだから。そして、非常にドラマチックな内容(実話)であるにもかかわらず、主題歌として使われているTレックスの「Life Is Strange(人生は奇妙だ)」そのままに、あくまでもサラっと描き切っているのが素晴らしい。
マシュー・マコノヒーとジェニファー・ガーナーが恋愛的な関係というよりは「同志」として描かれているのが良い。それは彼等が出会ってすぐの場面できちんと示されていて、マコノヒーはジェニファー・ガーナーの素敵な靴に気付く。ジェニファー・ガーナーは製薬会社の人間が高級な腕時計を身につけていることに気付く。これだけで、彼等が細かいことに気付くことのできる同じタイプの人間であることが分かる。
マシュー・マコノヒーが教会(もしくは自分の家)で祈っているように見えて、カメラが引くとストリップ小屋だと分かるシーン。先入観で物事を判断するのではなく、広い視野から物事の本質を捉えていかないと見誤ることがある、という本作のテーマを明確に浮かび上がらせている気の利いた描写だと思う。
ジャン=マルク・ヴァレは『ヴィクトリア女王 世紀の愛』も素晴らしいっすよ。どちらも自分が「生きる」ために、自らの手で未開の荒野を切り開いていこうとした人の話。