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前作『Sainthood』の発表以降、モーガン・ペイジとの共演曲「Body Work」、デヴィッド・ゲッタとの共演曲「Every Chance We Get We Run」、さらにはカーリー・レイ・ジェプセン『Kiss』へのサラ・クインの参加などでその兆候があったように、本作ではグレッグ・カースティンをメイン・プロデューサーとして迎え、これまでの「インディー・ロック」然としたサウンドから脱却して一気にエレクトロ化。「Paperback Head」でマドンナの「Material Girl」にオマージュを捧げていたり、シンディ・ローパーの「Time After Time」をカヴァーしたりしてきた彼女達の80年代趣味が前面に出た華やかなサウンドでまとめ上げられている。
しかし、サウンドが華やかになった反面で、歌詞はティーガン&サラ史上もっとも暗いんじゃないだろうか。何しろ楽曲タイトルからして「Goodbye, Goodbye」「I Was A Fool(私は馬鹿だった)」「I'm Not Your Hero(私はあなたのヒーローじゃない)」「How Come You Don't Want Me(どうして私を求めてくれないの?)」「I Couldn't Be Your Friend(君の友達になれなかった)」「Now I'm All Messed Up(私はもうダメだ)」ときたもんだ。だからこそ、本作のエレクトロ化した強靭なビートが効いてくる。決して叶うことのない愛、思い通りにいかないことばかりの人生に向かって、自分を奮い立たせるかのようにビートを叩きつけるタフなポップ・ソング集。真夜中に、自分の部屋でひとりぼっちで踊る時に(Dancing On My Own)、きっと心に寄り添ってくれるであろうアルバム。それが『Heartthrob』だ。全10曲36分。傑作!