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本作の半年前に発表された過去曲のリメイク集『Director's Cut』は、当時のような高音をケイトが発声できなくなってしまった為に、大半の曲のキーがガッツリと下げられていてガックシの駄作だった。そもそもキーを変えると音全体の響きが全く変わってきてしまうわけで、カラオケ屋に来ているわけじゃないんだから勘弁してくださいよ、という。
それに比べれば、今回は書き下ろしの新曲集というだけで随分マシ。逆に言えばそれだけケイト・ブッシュに対する期待値が下がってしまっているということだが、そうは言っても全7曲で65分は長すぎだろ。デブのオバハンがダラダラとピアノの弾き語りをしているだけにしか聴こえんよ。たとえばキンブラやチューン・ヤーズのようにケイト・ブッシュの本質であった身体性を正しく継承したアーティストが活躍している中でこの劣化っぷりはキツすぎる。しかもレジーナ・スペクターのように、ピアノと声でどこまで表現できるか、ということが突き詰められているわけでもないし。勘弁してくださいよ、ほんとに。というわけで、こんなアルバムを作っている暇があるんだったら『The Sensual World』以前の過去作をきちんとリマスターして再発してくれー。
↑「みんなは地面を見つめてばかりだけど/私は空を見つめているの/あの大きな空を/理解してもらえないかもしれないけど/私はあの大きな空を空を見つめているの」という歌詞も、ケイト・ブッシュが踊りまくるPVも素晴らしすぎる。『The Dreaming』以降の苦悩を経ての『Hounds Of Love』でのこの突き抜けっぷりは本当に感動的。名曲。