★★★★
R.E.M.にとって久々の傑作となった『Accelerate』のプリプロダクションとしてダブリンで行われた5日間の公開リハーサル（その為、わざわざ冒頭で観客に「This Is Not A Show」という断りを観客に入れている）の模様を収録した2枚組ライヴ・アルバム。
00年代のR.E.M.のアルバムではこれが1番楽しめた、って言ったら怒られるかな？ なにしろ、後に『Accelerate』に収録される9曲（と収録漏れになった未発表曲2曲）を除くと、残りはほとんどがI.R.S.時代の曲なのだから。目を引くのは、デビューEPの『Chronic Town』から4曲、スタジオ・ライヴ同然の形式で録音されたとされている『Reckoning』から6曲も演奏されているという点。つまりはこの時点で『Accelerate』が向かうべき方向、基本に戻らなければ駄目だということを、彼等自身がきちんと把握していたことが分かる。近年はライヴでの歌唱が雑になってきていたマイケル・スタイプも、今回は普段のツアーだとあまり演奏しない曲が中心ということもあったのか、比較的丁寧なそれになっているのも嬉しいじゃないか。
どうでもいいことを書いておくと、「Little America」のサビの歌詞がオリジナルの「Jefferson, I think we lost」から「Washington, I think we lost」 に変わっているのが個人的には印象に残った。この曲ってツアー中のバスの中でR.E.M.が（5人目のR.E.M.と言われた）マネージャーのジェファーソン・ホルトに向かって、「ジェファーソン、僕たちは道に迷ってるみたいだよ」と言っている状況を、ロナルド・レーガンが大統領に再選を果たした当時のアメリカの状況に重ねている、つまり「ジェファーソン」とは『アメリカ独立宣言』を起草したトマス・ジェファーソンでもあるわけだが、ジェファーソン・ホルトとR.E.M.は1996年に決別しているので、かなり直球な歌詞に書き換えられている、と。
ちなみにライナーノーツを執筆しているのはギャング・オブ・フォーのアンディ・ギル！って、もうこれだけでギター・ロック史的な観点から買う価値ありまくりだと思うんだが。あと、DVD付きのデラックス・エディションも発売されてはいるけれど、中身はあくまでも記録映像といった感じなので、こちらを無理して買う必要はないとも思ったなり（とは言っても、CDのみのヴァージョンとそんなに値段差はないんだけどね）。
http://www.youtube.com/watch?v=d6bg704_zq8
↑『Chronic Town』の実質的なタイトル・ナンバー。こんなバンドがいきなり登場してきたらそりゃあビビるって。そりゃあ先輩格だったはずのフィーリーズだってカヴァーするよって話だ。名曲。
