映画『ママ男』(監督:ティム・ハミルトン)観賞。★。
ジョン・ヘダー主演の『Mama's Boy』が、直訳ともいえるこんな邦題で出ることになったんだから、『Napoleon Dynamite』が『バス男』なんて邦題を付けられたのも一回りして辻褄が合ったんじゃないだろうか。というか、『バス男』とか『26世紀青年』みたいな邦画に便乗したトホホな邦題は、おいら的にはそれほど問題だとは思ってなくて(もちろん問題がないわけではない)、むしろズーイー・デシャネル主演の『Tin Man』が『アウター・ゾーン』になったり、ラダ・ミッチェル主演の『When Stranger Appear』(傑作!)が『ワイルド・ストレンジャー』になったりと、投げやりな意味なし偽英語タイトルを付けられてレンタル屋の棚に埋もれていく方が大きな問題だと思うんだが。
『ママ男』に話を戻すと、ジョン・ヘダーが29歳にもなって実家住まいで母親にベッタリなマザコン男、というキャラ設定は間違ではないないものの、本作での描き方は度が過ぎてるにもほどがある。未亡人になって20年近く経つ母親(ダイアン・キートン)がジェフ・ダニエルズと結婚しようとすると、それに反対して彼の会社の備品を破壊したりするのだ。映画の作り手はそれをどうやらチャーミングだと思っているようなんだが、それはただ迷惑なだけの逆ギレ自己中男だよ! あげくの果てに、車で長旅をすることになると、運転は恋人のアンナ・ファリス(『Just Friends』と『Smiley Face』の中間って感じのキャラで超チャーミング)に任せっきりで、自分は助手席で寝てばかり、って恋人は召使いじゃねえんだよ! 死ね! ジョン・ヘダーは最初が『バス男』だったので後が大変といったところ。
本作の救いは既成曲の使い方で、アメリカ映画であるにも関わらず英国ロックに偏りまくった選曲が最高。ジャムとスミスとビリー・ブラッグを大フィーチャー! アンナ・ファリス演じるノラは自分の部屋にモッリシーのポスターを貼っているぐらいのスミス/モリッシー好きという設定で、そんな彼女がカーステレオで聴いているのはビリー・ブラッグの「She's Got a New Spell」だったりと、彼女はスミス〜ジョニー・マー〜ビリー・ブラッグという流れをきちんと分かっているのだなあ、と思わせてくれる細かいこだわりがそのキャラクターを一層魅力的なものにしている。しかも劇中ではアンナ・ファリスが歌っていたマーク・マザーズボウ書き下ろしのナンバーを、エンド・クレジットではなんとビリー・ブラッグ本人が(初期の彼のトレード・マークであった)ワンマン・クラッシュ・スタイルで歌うのだ(この為に新録! しかも2曲も!)。この2曲が収録されているってだけでサントラは買いだな。映画はクソだけど。