★★★★
クイアーズ、スクリーチング・ウィーゼル、MTX等と共に90年代のポップ・パンク・ルネッサンスを築いた、デイヴ・パラサイト率いるパラサイツが2度の解散劇を経て奇跡の復活! 11年振りとなる新作アルバムを発表した。
アノラック・ムーヴメントの中核を成した、パステルズのスティーヴン・パステル主宰のインディー・レーベルの名前がラモーンズの曲名から採った「53rd & 3rd」だったり、「アノラックの女王」ことヨシノモモコ率いるオートマチクスがソニック・サーフ・シティをカヴァーしていたことからも明らかなように、アノラック及びギター・ポップ・シーンとポップ・パンクは親和性が非常に高いのである。
そこらへんを踏まえればクイアーズの『Munki Brain』がジーザス&メリー・チェインへのオマージュであったことなんかも自然と理解できるはずなんだが、なぜか音楽ジャーナリズム的にはほとんど無視されているのが残念。というわけで、そのミッシングリンクを埋める第一歩としてまずお勧めしたいのがパラサイツ。なにしろデイヴ・パラサイトはヨシノモモコの恩人なのだからな(詳細はオートマチクス『Good Melodies』のライナーを読むよろし)。音楽的にも、シューズ(4月に来日!)のマーフィー兄弟を彷彿とさせるデイヴのスウィートな歌声&メロディ・センスもあって、ギター・ポップ・ファンにも比較的抵抗感なく受け入れられると思うんだが。
本作ではクイアーズの名作『Pleasant Screams』を支えたマット・ドラスティックがドラマーとして全面的に参加している以外は、ほとんどの楽器をデイヴ1人で演奏するという相変わらずの宅録的な作りなんだが、以前と比べると格段に音質が良くなっている点が「新生パラサイツ」を強く感じさせてくれる。なぜかユニコーンの「おかしな2人」とメロディがよく似た「All The Time In The World」を皮切りに、全12曲30分を一気に飛ばすぜ(スペインの名ポップ・パンク・バンドであるフィードバックス「Real Real Good Time」のカヴァーを含む)。個人的には「Ronnie Is A Psycho」級の決め手になる1曲が欲しかったところだけど、復活作としてはこれで十分。