2月10日は渋谷のduo Music Exchangeで行われるジャック・ペニャーテの来日公演に行こうと思っているわけだが、ちょうどその日は会場そばのユーロスペースで北アイルランドのパンク・シーンを捉えたドキュメンタリー映画『シェルショック・ロック』が(N. アイルランド・フィルム・フェスティバルの一環として)上映されるので、ライヴ前に観ておこうと思う。
アンダートーンズの名曲「Teenage Kicks」は本当に他愛のないラヴ・ソングだ。でも、どうしてそんな歌をフィアガル・シャーキーはあんなにも必死になって歌うのだろう。『シェルショック・ロック』を観れば、その理由が少しは分かるのではないか、と思う。そういえば久保憲司もこんなことを書いていた。
この曲には子供の頃の初恋の熱い思いが込められている。初恋なんて清いもんじゃないか。隣の女の子も、その隣の女の子も好きというセックスの歌だ。(中略)でもこんな青年期の恋の歌なんか何万とあるのに何でこの歌はこんなに素晴らしいのだろう。
(中略)この答えは間違っているかもしれないが、それは北アイルランドで政治的、宗教的に毎日苦しんでいた彼らの気持ちがこのマジックを生んでいるんだとぼくは思う。ヴォーカル、ファーガル・シャーキーの言葉を借りるなら「政治や環境についての曲を作らない理由を話したくなかった。ぼくたちが住んでいる所は危険だ。忠誠心などを示したらトラブルに巻き込まれる。今だに状態は変わることなく続き、ぼくたちは同じ話を永遠にしている。皆 夢を見すぎたんだよ。400年も拘束されてきた土地を癒し、平和にしたいだなんて夢物語だ。ぼくたちは毎日あの土地の空気に触れてきた。毎日苦労してきたんだ。朝学校に行く時にも止められて尋問される。ぼくたちがライブハウスで毎週土曜日ジョッキ3杯で酔う意味、それは完全な現実逃避だ。観客、つまり、同士は説教なんて望んではいない、政治や社会はどうでもいい、何も変わらなくても、ギネス3杯で土曜の朝を迎えられる。」
これが答えだと思っている。アンダートーンズのサウンド、メロディから感じる優しさの秘密はこれだとぼくは思う。
The Undertones-Teenage Kicks
アンダートーンズは「Teenage Kicks」ばかりが突出して有名だけど、クイアーズがカヴァーしていた「Get Over You」なんかも超ポップで最高っすよ。クイアーズのヴァージョンは『Move Back Home』の新装盤で聴けます。
The Undertones-Get Over You