★★★
元ドッジーのナイジェル・クラークがバンド脱退から8年を経て放つ1stソロ・アルバム。以前のブリットポップ特集にも書いたように、ドッジーが96年に発表した『Free Peace Sweet』は伝統的な英国ロック・サウンドと現代的なループ・サウンドを巧妙に融合させた大傑作であり、おいらにとっても90年代で最も好きなアルバムの一つなだけに、本作の発表はまさに待望というに相応しい。
このアルバム・タイトルからはどうしたってキンクスの「20th Century Man」を思い浮かべずにはいられないわけだが、インタビューなどを読む限りでは特に関連などはないようだ。まあ、いずれにしてもナイジェル・クラークが英国ロックの正統な伝承者であるのは間違いない。復帰第一弾となる本作でもドッジー時代と何ら遜色ない極上のメロディを聴かせてくれる。だが、サウンドの方までドッジー時代をなぞっているだけなのはあまり褒められたものではないな。しかも、大半の楽器を自分一人で演奏しているだけに、サウンドにダイナミズムが感じられず、まるでドッジーのデモ・テイクのようなのだ(もちろん悪い意味で)。
いや、一人で演奏するのが悪いと言っているわけではない。最近ではベン・クウェラーの『Ben Kweller』のような傑作もあるわけで、やはりこれはナイジェルのセルフ・プロデュース能力の無さが原因なのだと思われる。ハイジャック・レコーディング・スタジオという自身のスタジオを設立したばかりなだけに、今後もおそらくはセルフ・レコーディングで作品を作っていきたいと考えているのだろうが、それこそドッジー時代のようにヒュー・ジョーンズをプロデューサーとして起用した方が、絶対に良いものが出来ると思うぞ。かつてドッジーと共同生活を営んでいたブルートーンズも、最新アルバムではヒュー・ジョーンズを再び召喚して、キャリアの集大成ともいえる傑作をモノにしたんだからさ。全11曲36分。