映画『ベルズ・アー・リンギング』
(監督:ヴィンセント・ミネリ)
★★★★★
ジュディ・ホリデイ&ディーン・マーティン主演の1960年作品。ジュディ・ホリデイが主演した唯一のミュージカル映画であり、これが彼女の遺作となった。
本作は50年代ミュージカルの最後の輝きと言っても過言ではないだろう。アーサー・フリードが製作した最後のミュージカル映画であるというだけでなく、この次の年には『ウエスト・サイド物語』が作られ、ミュージカル映画は死へと向かっていく事になるのだから。
この映画の魅力を語るとなると、とにかくジュディ・ホリデイに尽きる。彼女は元々遅咲きの人なので、当時すでに39歳。中年太りが進行していて、ときどき豚に見えたりもするんだが、動いている姿は本当にチャーミング。観ている誰もが好きにならずにはいられないキャラクターで、この人の存在感で映画の雰囲気が決定付けられてしまっている。そして、発音と声色の使い分けが天才的。演技は勿論、歌でもそれを活かした演出になっているのは偉い。
ディーン・マーティンのやる気のない歌と演技はいつも通りで素晴らしい。こういう受けの演技をやらせたら彼は絶品ですな。
脚本も良く書けていて、音楽抜きでも優れたスクリューボール・コメディとして成立している。まあ、ジュディ・ホリデイの主演作としては大傑作『純金のキャデラック』よりは劣るし、さすがに127分は長すぎるとも思うんだが、観ていて本当に幸せな気持ちになれる映画なので、輸入版ビデオを取り寄せてでも観る事をお勧めします。
あと、これって日本では未公開&ビデオ未発売らしいんだけど、以前にテレビで放送した事はあるよな? ミュージカル部分が『ザッツ・エンタテインメント PART2』に使われているのは知ってるけど、クライマックスの展開もおいらの記憶には残ってたぞ。