ケン・ローチの『石炭の値打ち』を観た後で『イギリス炭鉱ストライキの群像――新自由主義と闘う労働運動・1980年代のレジェンド』を読むと、サッチャー政権がイギリスの炭鉱労働者の何を潰そうとしたのか、そしてケン・ローチと脚本のバリー・ハインズによる描写の正確さが手に取るように実感できて面白い。『パレードへようこそ』の題材にもなった1984〜85年にかけての炭鉱ストライキ。このストライキについてはケン・ローチも『Which Side Are You On?』というドキュメンタリーを撮って炭鉱労働者達への支持を表明している。
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リアム・ギャラガーとジョン・スクワイアの共作アルバム『Liam Gallagher & John Squire』は「リアム・ギャラガーくんはジョン・スクワイアおじさんと遊べてたのしかったです」という意外と牧歌的なレイドバックした内容だった。リズム面で工夫がなくてグルーヴが弱いからこういう風に感じてしまうってのはある(プロデューサーはリアムのソロ作と同じくグレッグ・カースティン)。結果的に(パワー・ポップ路線ではない)ビッグ・スターみたいになっている楽曲があったりするのは面白い。「『Revolver』以来の最高傑作」という触れ込みはさすがに大袈裟すぎだ。
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Apple Musicの履歴まとめ(Apple Music Replay)、2024年は月別表示かーと思っていたら、2023年分の履歴も月別に表示できるようになってる! これは嬉しい。飲み屋で見せ合うのがさらに楽しくなるぞー。ちなみに2024年1月分はこんな感じ。まだ新譜が出揃ってないから面白みは少ないやね。年末年始は『ポール・サイモン全詞集: 1964-2016』と『ポール・サイモン全詞集を読む』を読みながら彼の全アルバムを聴き返しておりました。ケミカル・ブラザーズは来日公演の予習、ニール・ヤングはシグリッドのラジオの影響。ヴァクシーンズの『Pick-Up Full Of Pink Carnations』は早くも年間ベスト・アルバムの有力候補っす。
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配信リリースされた『神さま聞いてる? これが私の生きる道?!』(傑作!)でザ・バンド「The Night They Drove Old Dixie Down」のジョーン・バエズによるカヴァー・ヴァージョンがフィーチャーされていたので、彼女のキャリアを追ったドキュメンタリー映画『Joan Baez: I Am A Noise』を観賞。本作の製作総指揮がパティ・スミスだったのを見て、そういえばボブ・ディランのローリング・サンダー・レヴューの時から彼女達には繋がりがあったことを思い出す。つまり、この映画自体が2人の長年に渡るシスターフッドの結晶なのだ。
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杉並区は久我山(井の頭線三鷹台駅より徒歩5分)のecho and cloud studioで10日間に渡って新曲の制作をおこなっていたシグリッド。SEKAI NO OWARIのギタリストのNakajinも参加していたみたい。傑作EP『The Hype』を経ての来たるべき3rdアルバムが楽しみすぎる。
2月Universal Music U.KのアーティストsigridさんがプロデューサーAskjellさんと10日間、曲作りのためにノルウェーから。
— echo and cloud studio (@echoandcloud) 2024年2月28日
「とてもこのスタジオ好き❤️ありがとう」と言っていただけました。
スタジオを通して様々な音楽が世界へ。喜びです。https://t.co/l3Jdg3mNju#sigrid #askjell
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トラヴィス・バーカーやヤングブラッドのプロデューサーのマット・シュワルツが参加している1stフル・アルバム『Traumatic Livelihood』も良かったジャズミン・ビーン。彼女の父親がワイルドハーツのジンジャーなのは知っていたけど、母親はフラッフィー(再結成した90年代のセックス・ピストルズの前座として来日したこともある、短命に終わったUKパンク・バンド)のドラマーのアンジー・アダムスだったんすね。ジャズミン・ビーンの音楽性も、マフスやザ・ベスを好きだったりするジンジャーの趣味趣向も、フラッフィーを媒介に様々な点が1本の線で結ばれる感じだ。