
映画『Pavements』はペイヴメント(Pavement)のキャリアを追ったドキュメンタリーなのにタイトルが複数形なのはどういうことかと思ったら、本編(と言っていいのかな)と役者達による再現ドラマ(及びそのメイキング)、さらには彼等の楽曲を使った舞台ミュージカル(及びそのメイキング)が並行して描かれるという、複数のペイヴメントが登場する内容ゆえの複数形なのだった(さらに2022年に開催された彼等の展覧会のタイトルでもある)。いかにもアレックス・ロス・ペリー(『ハースメル』)の監督作らしい、まどろっこしい作りやなー。彼等のドキュメンタリーの先行作品だった『Pavement: Slow Century』はライヴとインタビューを羅列しただけの極めてシンプルな作りだった分、本作のまどろっこしさが際立つというか。
特に初期のペイヴメントは当時の硬直化してきたロック・シーンに対する批評的/批判的な姿勢によって「ロックの解体と再構築」に大きな役割を果たしたとは思うし、本ドキュメンタリーもそれに倣って「ロック・ドキュメンタリーの解体と再構築」をやろうとしているとは思うんだが、映画として面白いかは別問題だ。そもそもペイヴメントにはスティーヴン・マルクマスの秀逸なソングライティングがあった。本作はそれに匹敵するような脚本を用意できていないと思う。だったら素直にやれって話だ。
