Roisin Murphy/Take Her Up To Monto
★★★★★
前作『Hairless Toys』と同時進行で制作されたというロイシン・マーフィーの4thソロ・アルバム。前作がモロコ時代の『Statues』の延長線上にある統一感のあるアンビエント・ダンス・アルバムだったのに対して、本作は『Things To Make And Do』と(世間的にはほとんど無視された)イタリアン・ポップスのカヴァーEP『Mi Senti』の延長線上にある「歌もの」としての側面が強い内容。
ちなみにアルバム・タイトルはアイルランドの同名フォーク・ソングからの引用で、「モント」はアイルランドのかつての赤線地帯の名称。これは『Hairless Toys』よりも猥雑な(≒バラエティに富んだ)楽曲群をひたすら歌い倒していく作品に相応しい名前を探しているうちに、ロイシンのアイリッシュとしての遠い記憶/ルーツが自然に呼び起こされたと考えるべきだろう。つまりはランナーズ・ハイならぬシンガーズ・ハイによる無意識の産物。どれぐらいハイなのかというと、バーズよりも2マイル高い(「Ten Miles High」)。すなわち傑作。全9曲47分。