映画『ブロンズ! 私の銅メダル人生』(監督:ブライアン・バックリー)観賞。★★★★★。
またまたデュプラス兄弟の製作作品。かつての銅メダリストだが、足の故障により選手生命を断たれたホープ(メリッサ・ラウシュ)。過去の栄光にすがって生きている彼女が後進の指導にあたることになって…という体操選手版『ヤング≒アダルト』。ただし、『ヤング≒アダルト』が「故郷を出た人間の物語」だったのに対して、こちらは「故郷を出られなかった人間の物語」。そして「夢が終わったらどうやって生きていくの?」という話でもある。
体操に人生の全てを費やしてきて無学なホープは、いわゆる「ツブシがきかない」人物ってやつだ。TVシリーズ『ビッグバン★セオリー』で長年に渡って助演を務めてきたメリッサ・ラウシュは、その身長の低さ(150cmしかないらしい)などもあって演じる役柄がある程度固定されてしまっている感がある。それならばとメリッサ・ラウシュ自身が脚本を書いた本作は、つまりシルヴェスター・スタローンにとっての『ロッキー』のような位置付けにあたる作品であり、そんな彼女のセルフイメージや人生観が様々な場面で反映されていると思う(『The Bronze』という原題からして、脇役コメディ役者としてキャリアを積み重ねてきたメリッサ・ラウシュ自身の達観と自尊心のせめぎ合いが表れているかのようだ)。教え子をオリンピックに送り出し、時代が移り変わっていく瞬間をただただ眺めるしかないクライマックスを経て、ホープの人生は続いていく。彼等には彼等の人生があるし、私は私の人生を全て引き受けて生きていくしかない。でも、生き続けていれば、たまには良いことだって起こるかもしれないのだ。