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「他人への楽曲提供を念頭に置いて書かれたナンバーを集めた」というコンセプトはあるものの、基本的には世界的な大ブレイクを果たした前作の内容をそのまま踏襲したアルバム。前作における「Chandelier」のような決定的な名曲がない代わりに、ユーモラスなジャケットに象徴されるような「軽み」が前面に出ているのが大きな特徴で、おそらくは前作のプロモーションで行った、決して客席に顔を向けないライヴ・パフォーマンスなどが(あれは楽曲や彼女自身のダークサイドを強調したものではあったのだが)必要以上にシリアスに受け止められてしまったことに対する回答という側面もあるのだろう。シスコのTバック賛歌「Thong Song」をサンプリングしている曲がある(「Sweet Design」)、といえばその軽さが分かってもらえるだろうか。キャロル・キングでいえば『Tapestry』に対する『Music』、サム・ライミでいえば『死霊のはらわた』に対する『死霊のはらわたII』にあたる作品。前作のような「クラシックな風格」には欠けるんだが、その分だけポップ・ミュージックとしての「刹那の輝き」が増している感じで、(少なくとも今の時点では)おいらは今作の方が好きだな。
それにしても、先行シングルの「Alive」はもともとアデルへの提供予定曲だったらしいけど(アデルもソングライティングに参加)、ここまで歌い手の歌唱力がモロに露呈するナンバーなんて、ライヴで披露することを考えたらさすがのアデルだって歌いたくないでしょ。色々な意味でシーアの容赦ない凄みが堪能できるナンバーだと思う。
↑今作のジャケットは「Buttons」のPVの発展形でもある。