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メーガン・ワシントンの1stソロ・アルバム。念の為に言っておくと、これまでの『I Believe You Liar』と『Insomnia』はいちおう「ワシントン」という不定形バンド/ユニットでの作品ということだったのだ。キュアーの「Close To Me」を下敷きにした先行シングル「My Heart Is A Wheel」の歌い出しが「My heart is a lonely hunter(私の心は孤独な狩人)」であるということが象徴的なように(これはもちろんカーソン・マッカラーズの『愛すれど心さびしく(The Heart Is A Lonely Hunter)』へのオマージュ)、前作『Insomnia(不眠症)』の路線をさらに推し進めた非常に内省的なアルバムとなっている。そもそも、もともとはジャズ畑のミュージシャンだったメーガン(ジャズ・ミュージシャンとして来日経験もあり)が、もっと自分の心に寄り添う音楽を演りたい一心でワシントンを始動させて現在に至るのだから、この変化は自然なものといえるだろう。
本作におけるソングライティング・パートナーがシーアのそれでもあるサム・ディクソンなので、暗さの質感としてはシーアの『1000 Forms Of Fear』にやや近いか。『1000 Forms Of Fear』と比べるとサウンドがギター・ロック寄りなのがメーガン・ワシントンの個性だ。また、内省的になればなるほど自身の出自を改めて見直す必要があったのだろう、「Get Happy」は当然ジャズ・スタンダードの同名曲を意識してのものだろうし、ラスト2曲のピアノの弾き語りからもほのかにジャズの香りが漂ってくる。メーガン・ワシントンという人のありのままの姿が浮かび上がってくる傑作。全12曲48分。