映画『ウォールフラワー』(監督:スティーヴン・チョボスキー)観賞。★★★。
昨年10月に予想した通りに、本作で描かれている内容のほとんどはすでにライアン・フレック&アンナ・ボーデンの『イッツ・カインド・オブ・ア・ファニー・ストーリー』できっちりと(アニメーションや誇張した回想シーンなどを交えることによって)映画的に描かれてしまっているのだった。そりゃあ90年代ノスタルジーに傾いている『ウォールフラワー』と、ブロークン・ソーシャル・シーンがスコアを手掛けている『イッツ・カインド・オブ・ア・ファニー・ストーリー』ではどちらが「今」の映画として説得力があるかって話ですよ。デヴィッド・ボウイ大フィーチャーということでは、『イッツ・カインド・オブ・ア・ファニー・ストーリー』でもクイーン&デヴィッド・ボウイの「Under Pressure」を登場人物達が(オリジナル音源に合わせた口パクで)大熱唱するしね。
あと、『ウォールフラワー』は原作既読だったんだけど、大筋をすっかり忘れていたこともあって、(伏線があるとはいえ)後半でかなり唐突に性的虐待の話が出てきて一気に冷めてしまった。(作り手の意志はどうあれ)性的虐待という深刻な社会問題を映画のテクニックとして利用しているだけじゃん。青少年の心に寄り添う振りをしておきながら、結局のところそれを弄んでいるだけじゃないの?と。だったらば、「大した問題もないのに、こんなにも周りに溶け込めなくて、こんなにも落ちこんでいる僕は頭がおかしいんじゃないだろうか」という青春の袋小路と真っ正面から向き合っている『イッツ・カインド・オブ・ア・ファニー・ ストーリー』の方が遥かに誠実で素晴らしいと思う。
というわけで、以前から推しまくっているエマ・ロバーツの傑作3部作の現在の状況をば。サム・ロックウェルのウォルター・マッソーっぷりが素晴らしい「エマ・ロバーツ版『がんばっていきまっしょい』」こと『The Winning Season』改め『ハートボール』はDVDレンタルが始まっております(セルDVDはなし)。エマ・ロバーツが役者として覚醒するきっかけとなった『Lymelife』は日本公開/DVD化の予定なし。『イッツ・カインド・オブ・ア・ファニー・ストーリー』は配信スルーで未DVD化、と。相変わらず日本では不遇っすなあ>エマ・ロバーツ。『なんちゃって家族』の公開によってこの状況が少しでも改善されるといいんだけど。