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一部では本作について「ふくろうずが変わった」的なことが言われているようだが、実際のところはバンドの基礎体力が上がって陰と陽のコントラストの付け方が上手くなっただけで、これは正統な進化であると思う。
たしかに、本作には過渡期から脱した(ビートルズの『Help!』と同じような)突き抜けた明るさがあるのは事実だが、そもそもバンドのソングライターである内田万里は『ビートルズの遺伝子ディスク・ガイド』のインタビューで、「ビートルズのような、軽くてずっと聴ける音楽」を作りたいと言っていたではないか。だから表題曲「テレフォン No.1」のようなポップな要素にしても(「グッドナイトイズカミング」などの進化形としての)ふくろうずの一側面としてフラットに評価しておくべきだろう。ビートルズだって『Help!』の直後に英国的な陰影を強めた『Rubber Soul』を発表しているわけだしさ。ちなみに内田さんはついこの間も(どこまで本気かは分からないが)「次はすごく暗いアルバムを作ってやる」と言っていたので、今後のふくろうずはさらに面白いことになっていくと思われる。ひねくれ者の肖像。
70年代ディスコに回帰したダフト・パンクと同調するかのように「S・O・S・O・S」でヴァン・マッコイの「The Hustle」を引用していたり*1、「テレフォン No.1」では(またもや)ベイ・シティ・ローラーズの「Saturday Night」を引用していたりと、新しさと懐かしさが同居した彼等のエヴァーグリーンなセンスは健在。ふくろうずの本質は不変かつ普遍なのだ!長らく待たされた甲斐のある傑作。というわけなので、次はあんまり間を空けないでフルアルバムをよろしく。全7曲26分。
*1:過去にふくろうずは「グッドナイトイズカミング」でダフト・パンクの「Aerodynamic」を引用している。