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レジーナ・スペクターとシー&ヒムとのミッシングリンクを埋める傑作だった『I Believe You Liar』からちょうど1年でメーガン・ワシントンの新作が到着。全8曲32分というボリュームながらも、公式発表によると2ndアルバムではなくてあくまでもEPという扱いらしい。
『I Believe You Liar』を代表する名曲である「How To Tame Lions」がキーボードの単音リズムを中心に組み立てられていたり、「Rich Kids」がボ・ディドリー+モータウン風なビートだったりしたことからも分かるように、メーガン・ワシントンという人は(ピアノ弾き語り系のシンガー・ソングライターにしては珍しく)アクセントの利いたグルーヴを前面に押し出してくることが多いんだが、本作の冒頭2曲(「Holy Moses」*1「Plastic Bag」)はそんな彼女が好んで使う土着的なビートをさらに突き詰めた「『I Believe You Liar』の結論」というべきナンバーなのだった。ちなみに『I Believe You Liar』のインターナショナル盤ではこの2曲を追加する代わりに(「How To Tame Lions」と曲調が似ている)「Clementine」がオミットされているので、メーガン・ワシントン入門盤としてはそちらの方がお勧め。
残りの6曲は弾き語りを中心としたシンプルなサウンドのナンバーで占められており、EP全体の感触としては『I Believe You Liar』のデラックス盤に付いていたシングルB面集に近い。というわけで結論が出てたり出てなかったりで、本人的にはあくまでもサラっと仕上げた「2ndアルバムに至るまでの途中経過報告」といった感じなのかもしれないが、その取り留めのなさ&気負いのなさが(「80 Miles」や「Five & Ten」といった随筆群を愛してやまない人間には)なんとも愛おしく感じられるのだった。これはこれで傑作。
↑ルーファス・ウェインライト「Want」のカヴァー。
*1:PVは映画『スイート・チャリティ』(の「Rich Man's Frug」)へのオマージュ!