映画『スラムドッグ$ミリオネア』(監督:ダニー・ボイル)観賞。★★★。
グッときたところがないわけではないんだが、どうにも不完全燃焼という感じ。『シティ・オブ・ゴッド』的なリアリズム志向の物語を、フランク・キャプラ的な「おとぎ話」に昇華させることによって感動を呼ぼうとする狙いは分かるんだが、それにしては作り手におとぎ話を語る上での覚悟が足りないのではないか。終劇後にボリウッド映画風のミュージカル・シーンがあくまでも「おまけ」として(エンド・クレジットで寸断されながら)挿入されるところに象徴的なように、おとぎ話モードで邁進するべきところでも「リアリズム」方面への野暮な目配せ/エクスキューズがたびたび顔を出すのが鬱陶しい。たとえば、あのミュージカル・シーンをきちんと本編に収めて、主人公のお兄さんも一緒にノリノリで踊る、ぐらいの腹の括り方が作り手にあれば、もっと感動できたと思うんだが。これだったら徹底的におとぎ話を作っていこうとする粋な意志が貫かれている現地のボリウッド映画の方が遥かに面白いし、感動も大きいんだってば。たとえば昨年一般公開された『家族の四季』なんかを観てみろって話でさ。
褒めるとするならば、ダニー・ボイルは既成曲の相変わらず使い方が上手いってことで、劇中で大フィーチャーされているM.I.A.の「Paper Planes」は名曲だと改めて思ったことだった。『スモーキング・ハイ』でも(映画としての出来はともかくとして)この曲が使われている場面は良かったよね。まあ、M.I.A.使いで最高なのは『エージェント・ゾーハン』(傑作!)における「Jimmy」なんだけどな。「ちんこ」という直球すぎるタイトルと同作の振り切れっぷりが見事にマッチしているという。
↑「Paper Planes」に乗せてフリースタイルを披露するMC・ラーズ。