シー&ヒム結成のきっかけとなった映画『The Go-Getter』の予告編がついに公開。おお、早くも傑作の予感が。心にしみる青春映画になってそう。これまで公開が決まらなかったのは、別に映画自体がつまらなかったとかいうわけではなくて、ヒロインであるズーイー・デシャネルが中盤まで姿を現さない、とかそういうインディー映画ならではの物語の構造に原因があったような気が。予告編の後半でフィーチャーされてる楽曲はM・ウォードの「Vincent O'brien」(『Transfiguration Of Vincent』収録)ですな。
それにしても、どうして日本だと映画ファンの間でもズーイー・デシャネルの知名度が上がらないのだろう。エル・オンラインは「新おしゃれミューズ」とか名付けて盛り上げようとしたけど、ほとんど効果なかったし。というかだねえ、ズーイーをファッション・セレブ的な側面からだけで見たって、その魅力の半分も伝わらないんだよ。だってさあ、映画のプレミアで他の俳優がスタイリストを付けてキメキメにドレスアップしている中で、一人だけ自前の古着でドレスダウンして来場しちゃう、ってのは確かに目立つんだけど、真夏のプレミアなのに黒タイツを履いて来ちゃったりするんだぜ。それはおしゃれでもなんでもなくて暑苦しいだけでしょう。そんなのを無理に褒めなくていいっつうの。
でも、ズーイーのこうした行動に意味があるとすれば、それは「他人にどう思われようと構わない。私は私の道を進むだけ」という彼女の人生観が表れているからなんだよね。「僕が知っている人の中で一番のオタク」と元恋人のジェイソン・シュワルツマンが言うほどの音楽オタクである理由も、結局は彼女のこうした一本筋の通った生き方に集約されると思うし(こういう人間になった原因は、親の仕事の関係で転校続きの幼少時代だった為になかなか友達ができなかった、ってのも大きいんじゃないかな)。だから、シー&ヒムの『Volume One』を語る際には、ズーイー・デシャネルが筋金入りの音楽オタクであることを避けては通れないはずだし、「ガーリー」とか「おしゃれ」みたいな形容詞でお茶を濁しても意味がないと思うんだよ。また、ズーイーが素晴らしいのは、それが単なる「私ってマニアックでしょ?」という世間に向けての自己アピールにも陥っていないという点で、じゃなければビートルズの「恋する2人」なんてド直球のカヴァーをしたりはしないよな。まさに独立独歩。
The Go-Getter (2007) movie trailer