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アート・アレクサキス以外のメンバーの総入れ替えを経て発表された前作『Welcome To The Drama Club』は、まだまだバンド・アンサンブルが固まっておらず、どちらかといえばアートのソロ・アルバムに近い作りで、当初の自分内評価は★★★★だったんだが、時間が経つにつれて★★★★★でも構わないような気がしてきた(アートの新生エヴァークリアにかける決意を綴った「Now」は名曲)。
そんな中で発表された今作は、ウディ・ガスリー「This Land Is Your Land」からゴーゴーズ「Our Lips Are Sealed」まで、アート・アレクサキスの年の功ともいうべき確かなポップ・センスが存分に発揮されたカヴァー集となった。なにしろこの人は95年に発表された2ndアルバム『Sparkle and Fade』でブレイクを果たした時点ですでに33歳だった(1962年生まれ!)という苦労人なのだから。
個人的にヤラれたのはヤズー「Bad Connection」のカヴァー! これを聴いてしまうと、どうしても(ヴィンス・クラークがヤズーの次の次に結成した)イレイジャー「A Little Respect」をカヴァーしていたウィータスと二重写しになってしまう。一流のポップ・マエストロでありながら、それと同時に強いバンド志向を併せ持っているという点でも、ウィータスのブレンダン・ブラウンとアート・アレクサキスはすごく近い立ち位置にいるシンガー・ソングライターだと改めて思ったことだった。そういえば、どちらのバンドも映画『恋は負けない』にフィーチャーされていたし。あと、アメリカにおける英国産エレポップ/ニュー・ウェイヴ需要って80年代当時から確実にあったよな。R.E.M.が名作デビュー・アルバム『Murmur』の制作前に(ニュー・オーダーやペット・ショップ・ボーイズのプロデュサーとして知られる)スティーヴン・ヘイグとレコーディングを行っていたことからも分かるように、英国のエレポップ/ニュー・ウェイヴ勢と米国のカレッジ・ロック勢って、一見すると正反対な音楽をやっていたように思えるけど、当時のメインストリームだった産業ロックに対するアンチという意味で、実はすごく親和性があったんだよね。
バンドの音楽性を考えれば当然すぎるほど当然なチープ・トリック「Southern Girls」のカヴァーや、映画『デトロイト・ロック・シティ』で大フィーチャーされていた「The Boys Are Back In Town」、シングル・ヒットした「Brown Eyed Girl」の感動的なライヴ・ヴァージョンなども収録。全15曲45分。
Everclear - Brown Eyed Girl
↑おいらのラヴコメ/学園映画好きなツボをこれでもかと突かれまくる悶絶もののPV! 空手の扱い方は『小さな恋のものがたり』(大傑作!)に通じるところがあるといえよう。