映画『少佐と少女』
(監督:ビリー・ワイルダー 主演:ジンジャー・ロジャース)
★★★★
日本ではビデオ化すらされていなかった、ビリー・ワイルダーのアメリカにおける監督デビュー作がついにDVD化されたのでさっそく観賞。
実際に観て初めて分かったんだが、これって『お熱いのがお好き』のプロトタイプだったんだな。「突拍子もない変装」という題材の扱い方がそっくりだし(『お熱いのがお好き』ではトニー・カーティスとジャック・レモンが女に、本作ではジンジャー・ロジャースが12歳の少女に成りすます)。日本盤DVDの解説には「当時31歳のG.ロジャースの少女役は無理があったと言ったら彼女は気を悪くするだろうか」と書いてあるけど、コメディは無理があるからこそ面白くなるんだよ! 『転校生』しかり。
ただ、当然ながらその「無理」が解消されるのがコメディにとってのカタルシスになるわけだが、驚いたことに本作は「無理」があるままで終わってしまうのだ。もちろん、「12歳の少女と大人の恋」という(当時の)モラル的に危険すぎる題材だからってのも大きいんだが。そうしたモラル的な問題をジャック・レモンとジョー・E・ブラウンという芸達者なコメディ・リリーフに任せることによって解消させたのが『お熱いのがお好き』だったというわけなんですな。つまり、「誰でも欠点はあるよ」という映画史上に残る名台詞は、本作の雪辱を果たすために17年越しで紡ぎ出された執念の言葉だったのだ!
とりあえずジンジャー・ロジャースがタップ・ダンスを披露するシーンの為だけにでも観る価値はあり。この人はフレッド・アステアとのコンビを解消した後もミュージカル映画にもっと出演するべきだったのにねえ。勿体無い。また、彼女が実生活ではタカ派の人間だったということを予備知識として頭に入れておくと、本作がどうしてこういう話になったのかが理解しやすくなると思う。
いやあ、それにしてもやたらめったらエロい映画だった。だってこれ、やっていることは完全にポルノだもの。なにしろジンジャー・ロジャースが子供達に輪姦されるシーンまであるのだから。