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8月15日に少しだけ取り上げたレジーナ・スペクターの最新オリジナル・アルバム。
その時に彼女を評して「ヨーロピアンなネリー・マッカイ」と書いたように、おいらが彼女の音楽を初めて聴いた人に思い浮かべたのはネリー・マッカイその人なのであった。声質がよく似ているのは勿論のこと、どちらもニューヨークのアンチフォーク・シーンに属するピアニスト兼歌手であり、どちらも作詞作曲から楽曲のアレンジまで手掛ける才女なのだから。
ただし、ネリー・マッカイは奔放なパブリック・イメージとは裏腹に、ポール・マッカートニーのビートルズ時代からの盟友であるジェフ・エメリックをプロデューサーに迎えるなど、サウンド作りでは意外とコンサバなのに対して、レジーナ・スペクターの方はクラシックの匂いを漂わせる保守的なイメージとは裏腹に、プロデューサーにはポール・マッカートニーの近作『Driving Rain』を手掛けたデヴィッド・カーンを迎えたりと、サウンド作りにおいてプログレッシヴな姿勢を持っているのが大きく違うところ。本作でも「On The Radio」の緻密かつ実験的な音作り(普通に弾いているはずのピアノが気付かないうちに逆回転のピアノにすり替わる!)に顕著なように、前作『Soviet Kitsch』以上にその姿勢が強まっていることが窺える(でも耳触りはこれまで以上にポップになっているのが嬉しい)。
また、ネリー・マッカイはエミネムが引き合いに出されるような子供っぽい歌詞が特徴なのに対して、一貫して「生きること」「生き続けること」について歌い続けているレジーナ・スペクターはどこまでも大人な印象。でも、この二人の年齢って実はたった2歳しか違わないんだよ! レジーナ・スペクターは1980年2月生まれ、っておいらと同い年じゃんか(学年は違うけど)。80年1月生まれのズーイー・デシャネルと同じく、90年代臭がほとんど感じられない、同世代に溶け込めていない同世代として物凄い親近感を覚えるぞ。これまたズーイー・デシャネルと同じく大のビートルズ・ファンなところも他人と思えん。
というわけで作品に感動しているのか、ズーイー・デシャネルと二重写しになったことで感動しているのかよく分からなくなってきたが、少なくともこのアルバムがレジーナ・スペクター史上最もキャッチーな曲が揃った文句無しの傑作であるということだけは間違いない。全12曲47分。おいらの今年の年間ベスト5への入賞もほぼ確定。必聴。
Regina Spektor - On the Radio (Promo video)
っていうかこの文章を書いている途中に知ったんだが、ネリー・マッカイってデビュー時のプロフィールで1984年生まれとなっていたのは年齢詐称だったのな(詳細は彼女のWikipediaにて)。グラビアアイドルとかじゃなくてミュージシャンなんだから、別に年齢を偽る必要なんてないはずなのにねえ。