Rachel Sweet/...And Then He Kissed Me/Blame It On Love
★★★
パブ・ロックと言えばスティッフ・レコーズ、スティッフ・レコーズを代表する3大女性シンガーと言えばカースティー・マッコール、トレイシー・ウルマン、そしてレイチェル・スウィートだ(映画ファンには『ヘアスプレー』の主題歌を歌っていたシンガーとしてもお馴染み)。職人気質のシンガー・ソングライターであったカースティー・マッコール(大好き!)や、オールディーズ・アイドルを徹底して演じていたトレイシー・ウルマンと比べると、レイチェル・スウィートは少し異質な存在で、基本的にはトレイシー・ウルマン路線でありつつも、それと並行してダムドやヴェルヴェット・アンダーグラウンドやディーヴォなどをカバーしてしまうロック姉ちゃんっぷりが微笑ましかった。
そんなレイチェル・スウィートがスティッフ・レコーズ離脱後に発表した3rdアルバム『...And Then He Kissed Me』と4th『Blame It On Love』が昨年末に2in1形式で再発されたので取り上げる事にする。注目すべきは何と言っても『...And Then He Kissed Me』の方で、このアルバムで彼女が目指しているのは何とブルース・スプリングスティーンなのだ。いや、マジで。彼女が単独で書いた「Billy And The Gun」や「Streetheart」なんてタイトルからしてモロだしな。しかも「Billy And The Gun」は『明日なき暴走』に収録されていた「Night」のパクリだし。
まあ、アルバム全体としては彼女のアーティスト志向が前面に出すぎたせいで、スティッフ時代よりもタルいバラードが増えていて少々退屈なんだが、ブルース・スプリングスティーン好きのおいらからしてみれば悪い気はしないわな。後にパット・ベネターがカバーする事になる「Shadows Of The Night」や、「Hit Me With Your Best Shot」の原曲となった「Two Hearts Full Of Love」が収録されているので、パット・ベネターのファンにもお勧め。クリスタルズ「Then He Kissed Me」〜ロネッツ「Be My Baby」のカバー・メドレーなんて鳥肌もんよ。