The Raveonettes/Pretty In Black
★★★
レヴォネッツの2ndフル・アルバム。これまで彼等が自分達の全ての楽曲に課していた「全曲同じキーで録音する」「3コードしか使わない」「曲は全て3分以内」「ハイハットやライド・シンバルは使わない」という制約が今作ではついに全廃されたという事で、自己抑制から解放された、さぞかしポップな作品になっているだろうと期待して聴いてみたんだが……なんだよ、これまでと大して変わってねえじゃんかよ!
確かに所謂「ジザメリ的」なサウンドから脱却してフォーク/カントリー色が濃くなってはいるんだが、よく考えたらそれもジザメリの歩んだ道程を辿っているだけじゃんか。いや、別にそれ自体は特に悪い事ではないんだが、重要なのはジザメリはレヴォネッツと違ってエクスキューズが一切なかったという事だ。たとえば「Happy When It Rains」と「April Skies」のコード進行がほとんど同じでも、そ知らぬ顔をして堂々と演奏する、その腹の括りっぷりに聴き手は感動したのである。つまりは最初にエクスキューズをしちゃうと後が色々と大変という事ですな。
相変わらずメロディー・メイカーとしては一流半の雰囲気勝負であるにも関わらず、曲が無駄に長くなっているのもどうかと思う。何度も書いてる事だけど、意識しないと3分以内の歌が作れない奴なんてのはポップ・ソングの作り手としては失格なんだよ! エンジェルズの「わたしのボーイフレンド」のカバーは悪くないけど、同曲についてはスパッジーズがオリジナルに匹敵するほどの名カバーを昨年中に披露していたわけで、どうしたって後発組は霞んでしまうわな。
ただし、ロニー・スペクターがゲスト・ボーカルとして参加した「Ode To L.A.」だけは文句なしに素晴らしいので星三つ。あのビブラートが聞けるというだけで1600円は惜しくない。やはり彼女の歌声は世界遺産級だと改めて思ったなり。全13曲44分。