クリスティアン・ローの前作『ロスバンド』はノルウェーを舞台とした音楽映画で、ノルウェーを代表するバンドであるモーターサイコの「Feel」が大フィーチャーされていたが、スウェーデンを舞台とした最新監督作の『リトル・エッラ』ではスウェーデンを代表する名パワーポップ・バンドであるワナダイズの名曲「You And Me Song」が大フィーチャーされていて、音楽だけで国の違いがはっきりと分かるように打ち出されているのは日本の観客としては非常にありがたい。
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今年リリース予定のトーキング・ヘッズのトリビュート・アルバム『Everyone’s Getting Involved: A Tribute to Talking Heads』でリンダ・リンダズが何をカヴァーしているのか問題ですが、私の見解としては「Found A Job」ではないかと。なぜなら、「Found A Job」におけるコード・チェンジの少ない平坦なヴァースからメロディアスなコーラスに突入していくという楽曲構成がリンダ・リンダズの「Oh!」に近いものを感じるからです。先日の来日時に私がおこなったインタビューで彼女達が「それこそトーキング・ヘッズがカバーした『Oh!』なんてあったら聴いてみたい」と発言していたのも、実は伏線だったのではないかと。正解していたら誰か酒の1杯でも奢ってください。
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サム・フリークス Vol.27で上映した『石炭の値打ち』にはクリケット(野球の原型)の話が多く出てきたけれど、次回のサム・フリークス Sで上映する『シュガー』はアメリカのプロ野球界における移民達の活躍と挫折を描いた映画、その次のサム・フリークス Vol.28で上映する『ザ・ビンゴ・ロング・トラヴェリング・オールスターズ&モーター・キングス』はローリングストーン誌選出による「史上最高のスポーツ映画30選」にもランクインしている野球映画の傑作、そして今年ラストになるサム・フリークス Vol.29で上映する『やぶれかぶれ一発勝負!!』も『マーシャン・チャイルド』も実は野球絡みの内容と、ここまで全部繋がっています。そこまで考えて上映作品を選んでいるので。サム・フリークス Vol.11で上映した『ゴー・フォー・シスターズ』の監督であるジョン・セイルズの代表作の一つ『エイトメン・アウト』(MLBのワールドシリーズで発生した八百長事件を題材にした映画)にジョン・キューザックが出演していたことも思い出されるってなもんだ。
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エミネムとマシン・ガン・ケリーのビーフは、マシン・ガン・ケリーが完全敗北した結果として彼がラップから距離をおくことになってポップ・パンク・アルバム『Tickets To My Downfall』を制作、それがその後のポップ・ミュージックの潮流を決定付けたわけだから、ビーフそのものよりも音楽的な成果を大事にしていきたいというのが自分の立ち位置。LL・クール・Jの大名曲「Mama Said Kncok You Out」がクール・モー・ディーとのビーフによって産まれたなんて、もはやほとんどの人が忘れてるでしょ? でも曲は残っていく。
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ケンドリック・ラマーが「Like That」のヴァースでJ. コール(とドレイク)をディスったことに対して、J. コールはアンサーとして「7 Minute Drill」を4月5日にリリースしたわけだが、1週間も経たないうちにJ. コールが早くも謝罪。同曲が収録されているアルバムのタイトルからして『Might Delete Later(後で削除するかも)』という及び腰な態度だったわけだが、マジで削除されそうな流れになってしまった。