エイミー・マンの新作『Queens Of The Summer Hotel』(映画『17歳のカルテ』の原作を基にしたコンセプト・アルバム)がリリースされたので彼女の旧作を改めて聴き返している。1stアルバムの『Whatever』は特別な位置付けのエヴァーグリーンな名作なんだが、ソングライティング的には『Lost In Space』〜『The Forgotten Arm』の時期が円熟の域に達していてマジで神がかっていると思う。この頃に彼女の来日公演を観られて本当に良かった。
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『Werewolves Within』は人狼ゲームの映画化なので典型的なフーダニットになるわけだが、例えば上映劇場ごとに異なる3つのエンディングが用意されていた(!)『殺人ゲームへの招待』のようなぶっ飛んだ仕掛けがあるわけではなく、あくまでも普通の劇映画だった。『殺人ゲームへの招待』はゴーゴーズのジェーン・ウィードリンが演じている「歌う電報配達人」がとにかく最高(すぐ死ぬ)。近年、同作はカルト映画として評価が急上昇しており、『Who Done It - The Clue Documentary』なんていう検証ドキュメンタリー映画まで作られた。リメイクも検討されているとか。
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人狼ゲームを映画化した『Werewolves Within』では、90年代を象徴する楽曲としてエイス・オブ・ベイスの「The Sign」(とサヴェージ・ガーデンの「Truly Madly Deeply」)が使われていた。「90年代のアバ」というべき存在であった彼等が、オリジナル・ヴォーカリストが脱退した際に若い女ヴォーカルを加入させたことでグダグダに失速していったのに対して、あくまでもオリジナル・メンバーに拘り続けたアバが40年ぶりのオリジナル・アルバム『Voyage』で有終の美を飾ったのを見ると、バンドの散り際の大切さというものを実感させられる。
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「Dancing Queen」が1位なのは当然として、自分が一番好きなアバの曲である「Knowing Me, Knowing You」が2位なのが嬉しい。中学生の時に彼等のベスト・アルバムを買ってから現在に至るまで、ずっとアバで一番好きな曲。あと、アバはデジタル・レコーディングに移行した末期の作品も名曲が多いんだけど、その辺についてもデペッシュ・モードと比較したりしながら触れているのが嬉しい。「You Owe Me One」なんかも最高っすよ。
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スロウ・クラブのラスト・ツアーを追った映画『Our Most Brilliant Friends』は悲しい悲しいドキュメンタリー。チャールズもレベッカも疲弊しきっていて、10年続いてきたバンドが終焉に向かっているのは分かっているのだが、それを止めることはできず、それでもステージの上では特別なマジックが生まれてしまうという切なさ。そんな様子がビートルズの解散と重ねて描かれるという、どうにも忘れ難い作品だった。これを観ると、レベッカのソロ・プロジェクトであるセルフ・エスティームは自分自身を奮い立たせる為に始めた表現活動であったことが分かる。だから彼女の新作『Prioritise Pleasure』が全英アルバム・チャートで11位を記録して、ついに商業的な成功を手に入れたのは他人事ながらも嬉しくなってしまうのだった。
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デュア・リパの『Future Nostalgia』収録の「Fever」にも参加しているベルギーのシンガー、アンジェルを追ったドキュメンタリー映画『Angèle』が日本語字幕付きで観れるなんてNetflix様々やで。11月26日配信開始!