キム・シャタックがギタリストとして最も影響を受けたのはジョン・レノン、デイヴ・デイヴィス、ブライアン・セッツァー、スザンナ・ホフスの4名なんだけど、それを踏まえるとビートルズの「You Can't Do That」でのジョン・レノンのギター・ソロってめちゃくちゃキム・シャタックっぽいすよね。
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LA Weeklyの記事によると、マフスの新作『No Holiday』はキムのALSが進行し、体が動かせなくなって声が出せなくなっても(パンドラスでのバンドメイトであったカレン・バセットの協力を仰ぎながら)ギリギリの段階まで作業が続けられたらしい。以下、カレン・バセットの証言ざっくり訳してみた。
キムのALSが進行し、マフスのアルバム用の作業が行えなくなって私に連絡が来ました。私に追加録音の作業を行なってもらえないか、と。私達2人は彼女の家でViber(インターネット電話&メッセージ・アプリ)を使ってコミュニケーションを取りながら協力して録音作業を進めました。私は彼女の自宅スタジオで、キムはリビングルーム。キムの耳にヘッドホンを掛け、リビングのテレビにApple TVを繋いでPCの画面を共有しました。私がスタジオからトークバックマイクで彼女に話しかけると、彼女は目とタブレットを使って指示を出すんです。上手くいきましたよ!
つまり『No Holiday』というアルバム・タイトルは「休んでる暇なんてない!」というキムの心の叫びだったのだろう。マジで『No Holiday』はマフスの名前を少しでも聞いたことある奴は全員聴けよ。
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「I'll Always Remember You (That Way)」
by Bowling For Soup featuring Kim Shattuck
ずっとあなたのことは覚えているよ
ずっとあなたのことは覚えているよ
年月が経って
時代が変わっても
昔のことはあまり思い出したりしないけど
あなたのことはずっと覚えているよ
↑今日に至るまでお蔵入りにされてきたキム・シャタックの貴重な声優仕事。著作権登録だけはされていて謎に包まれていたマフスの未発表曲「I Hate Gym」も聴ける!
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オリヴィア・ワイルドの監督作『Booksmart』は、ジョナ・ヒルの妹であるビーニー・フェルドスタインが主演しているので『スーパーバッド』と比較されるのは避けられないけれど、ビーニー・フェルドスタインとケイトリン・デヴァーの主演コンビ2人のキャラクターはおそらく『ロミー&ミッシェル』が下敷きになってますな。その証拠にケイトリン・デヴァーの母親役としてリサ・クドロー が出演している。『ロミー&ミッシェル』〜『小悪魔はなぜモテる?!』〜『Booksmart』と約10年ごとに学園映画の重要作にきっちり出演するリサ・クドロー。
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ビートルズの『Abbey Road』50周年記念エディションの影に完全に隠れてしまっているけど、リプレイスメンツの『Don't Tell A Soul』の30周年を記念して発売された、リプレイスメンツ版『Let It Be... Naked』というべき『Dead Man's Pop』もかなり良いです(そういえば、去年はホワイト・アルバムの50周年記念エディションのせいでローリング・ストーンズの『Beggars Banquet』の50周年記念リマスター盤が影に隠れてしまったが、こちらも凄く良かった)。
『Dead Man's Pop』の最大の目玉は、当時は没になったマット・ウォラスによるオリジナル・ミックスが復活している点で、レコード会社からの要望によりクリス・ロード・アルジがミックスを施した『Don't Tell A Soul』よりもリヴァーブ成分が控えめとなっており、リプレイスメンツのラフなロックンロール・バンドとしての魅力が強く感じられるサウンドとなっている。
『Don't Tell A Soul』は改めて聴き返してみると、ポール・ウェスターバーグの「生きていくことに対する迷い」が率直に綴られたアルバムなので、マット・ウォラスによるミックスは生々しすぎてコマーシャルではないと判断されたのだろう(そもそも「Don't Tell A Soul(誰にも言わないで)」というアルバム・タイトルからして非常に象徴的だ。「夢なんて叶えられないぐらいにボロボロだよ/今はただ理由なき反抗を繰り返しているだけ/俺は何をするべきなのか教えてくれないか?」from「I'll Be You」)。これが次作にしてラスト・アルバムとなった『All Shook Down』では完全に諦観の域に入ってしまう(ただし傑作)。
『Don't Tell A Soul』には映画『ヤング≒アダルト』で重要な使われ方をしていた「Achin' To Be」も収録されてますよ!