★★★
全員が70オーバーのバンドに何を期待しているんだって話ではあるんだが、最初から80点を狙いにいって80点を取った作品にしか思えないというか。
60年代の未発表曲と錚々たるソングライター陣(アンディ・パートリッジ、リヴァース・クオモ、ベン・ギバード、ノエル・ギャラガー、ポール・ウェラー)が書き下ろした新曲を組み合わせて1枚のアルバムとしてまとめ上げたアダム・シュレシンジャーの仕事は完璧。ただ、「“作られたアイドル・グループ”が反乱を起こして自演ガレージ・バンドへと変貌を遂げた奇跡のアルバム」である『Headquarters』をこよなく愛する人間としては、これじゃあ物足りないのだ(同作収録の「Zilch」はモンキーズ流ラップ・ソングといえるナンバーで、後にデル・ザ・ファンキー・ホモサピエンが「Mistadobalina」でサンプリングもしているのでヒップホップ・ファンも要チェックのこと)。「選曲にメンバーは一切関わっていなくて、レーベル側とアダム・シュレシンジャーが完全に仕切っていた」というマイク・ネスミスの発言を聞くとさらに複雑な気分になる。たとえば1996年の『Justus』は明らかに「『Headquarters』をもう一度!」という狙いで作られた自作自演アルバムなわけだが、本作は「ミッキー・ドレンツ、ピーター・トーク、マイク・ネスミス(&デイヴィ・ジョーンズ)という素材を使って手練の職人が作り上げたポップ・アルバム」で、『The Monkees』『More Of The Monkees』路線。まあ、そういう意味では原点回帰といえるのかも。