ルーカス・ムーディソンは反骨の人である。それは彼の長編デビュー作『ショー・ミー・ラヴ』の原題『Fucking Amal(≒クソったれの田舎町)』からも明らかであり、同作がスウェーデン・アカデミー賞を総ナメにした際の授賞式のスピーチでは、彼は気取ってばかりの出席者達に対して中指を突き立てるという行動に出たのだった(で、スウェーデン・アカデミー賞からは以降お呼びがかからなくなる)。
そんなルーカス・ムーディソンの反骨精神の極北といえるのが2002年の『リリア 4-ever』だ。ここではリトアニアの少女、Danguole Rasalaiteの身に実際に起こった事件を題材に、「このクソったれな世界で反骨を貫き続けると、最終的には死ぬ(世界に殺される)しかない」というところまで描いてしまった。故に、以降の彼は長い不調に陥り、『A Hole In My Heart』や『Container』といったひたすら露悪的&ひたすら自己満足な映画しか撮れなくなってしまう。復調のきっかけとなったのは2009年の『マンモス』だ。『リリア 4-ever』と同様の題材を扱いながらも、無償の愛によってかすかな希望を見出していく家族の姿を描いた『マンモス』は、ルーカス・ムーディソンが改めてクソったれな世界と真正面から向き合っていく覚悟を決めた作品といえるだろう。だが、ここではまだ彼の真骨頂である「反骨」が欠けていたのも事実。
そして、2013年。「反骨の人」ルーカス・ムーディソンはついに『ウィ・アー・ザ・ベスト!』で完全復活を果たす。彼の妻であるココ・ムーディソンの自伝漫画を映画化した本作は、1982年のスウェーデンを舞台に、中学生の女の子3人がパンク・バンドを組む物語。最初から最後まで反骨を貫き通す彼女達の姿を通して描かれているのは、「このクソったれな世界で反骨を貫き続けても、生き続けることはできる。まさにその為に音楽が(そして映画が)あるんじゃねえのか?」ということだ。彼は自身が愛するポップ・ミュージックの力を借りて、『リリア 4-ever』の壁を乗り越えたのだった。