★★★★
前作『Aphrodite』はカイリー・ミノーグのキャリアの頂点に君臨する大傑作だった。このことについてはおそらく本人も自覚していたのだろう。それ故に、以降の彼女の活動はベスト盤や過去曲のリメイク集の発表など、自身のキャリアを総括するようなものがしばらく続いていたのであった。
というわけで、4年振りのオリジナル・アルバムとなる本作ではジェイ・Z率いるロック・ネイションと新たにマネージメント契約を結んで心機一転。ということは、(かつて『X』の「All I See」を、ミムスをフィーチャリング・ゲストに迎えてリメイクしていたように)アメリカ市場に媚びた内容になるのかと思いきや、なんと同郷のオーストラリア出身のシーアをエグゼクティヴ・プロデューサーに迎え入れるという大英断。シーアも最近ではブリトニー・スピアーズやリアーナに楽曲提供しているだけに、これならアメリカ人だって文句は言えまい、という(オーストラリア愛溢れる)したたかさが頼もしい。前作のハードルを無理に超えようとせずに、自由にノビノビとやっている感があるのが本作の良さだ。そしてアメリカ市場を意識しているだけあって、「Sexercize」のPVに代表されるようにエロ度は高め。オーストラリア版GQの創刊15周年記念水着グラビアもこの延長線上にあるわけで、その一貫した姿勢が素晴らしい。やはりカイリーはエヴァーグリーンなズリネタなのである! まあでも、エリンギ・イグレシアス(男根のメタファー)とデュエットしたタルいバラード・ナンバー「Beautiful」は必要なかったかな。