「キャプテン・ビーフハートはピアノの黒鍵を叩いていただけ」という話でおいらが思い出すのは、アメリカのポピュラー音楽の基礎を築いたアーヴィング・バーリンのことだったりする。彼は譜面が書けなかったのはもちろんのこと、ピアノの腕もお粗末なもので、弾けるキーはF#のみ(要するに黒鍵ばかり弾いてたってこと)、転調するともうお手上げ状態で、そのためにわざわざ転調ピアノ(レバー操作でキーが変えられたらしい)を使って曲を書いていたそうだ。それで「White Christmas」のような超スタンダード・ナンバーをガンガン書き散らしていたんだから凄い。この2人に共通するデタラメさ加減にこそポピュラー音楽の面白さ、つまりアメリカからやってきた全く新しい概念「何か」があるんじゃないかとおいらは思ったりするのだった。
そういえば今週末からTOHOシネマズ 六本木ヒルズで『ショウほど素敵な商売はない』の上映が始まるけど、あれってドナヒュー家の物語であると同時にアーヴィング・バーリンのベスト・ヒット集でもあるんだよね。そういう意味でも超鉄板な映画。ちなみにおいらがアーヴィング・バーリンの曲で一番好きなのは、『イースター・パレード』のオープニングを飾る「Drum Crazy」かな。これはフレッド・アステアのダンスも含めて必見の名曲&名シーン。
「Drum Crazy」にかこつけて言うと、アステアはドラムの名手でもあって、その辺りは『足ながおじさん』でさらに観ることができる。とか書いてたら、『踊らん哉』の廉価版DVDが発売されていることに気付いた!はっきりと断言してもいいけれど、この映画はアステアのみならず、全世界で何千、何万本と作られてきたミュージカル映画の中の真の最高峰だから。おいらのオールタイムベストの1本だから。この映画を超えるミュージカル映画はいまだに現われていないですよ、マジで。ズーイー・デシャネルだってインタビューで「『(500)日のサマー』に最も合う曲は(『踊らん哉』の挿入歌である)『They Can't Take That Away From Me』」と発言してますぜ 。というわけで、ミュージック映画に興味があるなら『踊らん哉』をぜひ観てください!という話。
↓『踊らん哉』より、「みんな笑った」。