映画『キット・キトリッジ アメリカン・ガール・ミステリー』(監督:パトリシア・ロゼマ)観賞。★★★★★。
『幸せの1ページ』の影に隠れてアビゲイル・ブレスリン主演のこんな傑作がDVDスルーになっていただなんて。
フランク・キャプラというと、今では「ハリウッドの良心」を象徴する監督という扱いになっているわけだが、彼の作品自体はそういう言葉から想像されるような甘口なもの、楽観的なものではない。たとえば『素晴らしき哉、人生!』にしたって、絶望的な地獄めぐりの果てに「奇跡」が訪れるからあれほどまでに感動的なのだ。それは『オペラハット』にしたって『スミス都へ行く』にしたって『群衆』にしたって同じこと。人生の「影」を知っているからこそ、それを乗り越えるために「光」を描く。そんな姿勢こそが彼の作品の力強さに繋がっているのではないだろうか。
そういう意味で言うと、ヌルい「なんちゃってキャプラ風映画」が氾濫してる中で(それはそれで好きなのも多いけど)、本作はどこまでも正統にキャプライズムを継承しているといえる。1930年代の大恐慌時代が舞台になっているとはいえ、これは現代でも十分に通じる話であり、子供にはかなりキツいんじゃないかと思えるほどの(精神的な意味での)残酷描写(おいらですら観ていて胃がキリキリしたもの。でも、これこそがキャプラ映画を観ている時に覚える感覚そのもの)の果てにあるハッピーエンドには、だからこそ心震えるのだ。ミステリー映画としても一級で、少女探偵ものとしても『美少女探偵ナンシー・ドリュー』なんかが足下にも及ばないほどの完成度。子供向けだから、という甘えが一切ない名品。おいらにとっては現時点で今年のベスト1映画。必見。監督のパトリシア・ロゼマはおそらく相当なハリウッド・クラシック好き。